安倍晋三元首相銃撃事件を起こした山上徹也容疑者。一家を苦しめたのは旧統一教会への高額献金だった。91年に統一教会に入信した山上容疑者の母親は、夫の生命保険を原資に、直後から2千万円、すぐ後に3千万円、さらに1千万円と高額な献金を始めた。山上容疑者の伯父が本誌の取材に応じた。AERA 2022年9月26日号の記事を紹介する。(全3回の2回目)
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98年、母親の実父である山上容疑者の祖父が亡くなった。相続した土地を売却するなどし、母親はさらに約4千万円を献金。ほかにも数十万~100万円の献金を繰り返し、伯父いわく「高級住宅街にある約70坪の立派な家」だった自宅も売却してしまった。
困窮を極めていく一家。2004年、長男から「家に食べるものがない」と伯父に電話がかかってきて、あわてて駆け付けたこともあるという。そんな話を伝え聞いたのだろう。05年1月、山上容疑者は勤務先の広島の海上自衛隊で自殺未遂を図る。だが、韓国で40日間の「修練会」に参加中だった母親はプログラムが終わるまで帰ってこなかったという。
同年5月、伯父は大阪の病院に転院した山上容疑者に会い、パソコンを買い与えて、こう話した。
「援助するから、ワンルームを借りて、仕事を探しながら職業訓練でもしたらどうか、と。徹也はとても喜んでいました」
だが、家族の大反対にあったという。すでに相当な金額の援助をしていたことに加え、弁護士を4人抱える事務所を経営していたこともあり、
「『そこまでしなくていい、いい加減にしろ』と……。とても徹也の顔を見ては言えないと思って『あの話はなかったことにしてほしい』と手紙を書きました。返事はありませんでした」
■一周忌にも姿を見せず
このころ、伯父は教団の奈良教会に、献金の全容を明らかにするよう求めるファクスを送っている。
「後から知ったことですが、元教会長が窓口になり、私のいないところで母親との間で返金の合意書が交わされていました。毎月30万~40万円ほどの返金が始まり、いつも現金で受け取っていたようです。だから実際どのくらい戻ってきていたのか。記録がないのでなんとも言えない」(伯父)