
NPO法人「BONDプロジェクト」代表・ルポライター、橘ジュン。家に居場所がなく、街をさまよう少女たちがいる。彼女らはひと晩を過ごすために、危険を知りながらも男性に会いに行く。橘ジュンはそんな少女たちの声を受け止めてきた。相談は月に3千件以上。必要であれば保護し、行政支援へつなげる。夜の街に自ら赴き、少女たちに会いに行く。直接会って聞いた声を、世間へ伝えていく。
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#死にたい、#今夜泊めてください、#飛びたい。SNSでつぶやくと、「泊めてあげるよ」というダイレクトメッセージが次々に飛び込んでくる。会ったこともない男性だ。会えば関係を迫られる。拒否すればレイプ、ことによっては命の危険さえある。わかっているのに少女たちは会いに行く。今夜ひと晩、身を休める場所を探すために。
2017年に神奈川県で起きた座間9人連続殺害事件ではツイッターでこうした孤独なつぶやきを発した若者9人(うち男性1人)が犯人におびき出されて殺害された。そして彼女たちは決して特殊な存在ではない。
橘(たちばな)ジュン(51)の運営するNPO法人BONDプロジェクトは、LINEやオンライン面談などで少女たちの声を受け止めている。
父親からレイプされた、母親に「産まなければよかった」と言われた、生きている意味がわからない、消えたい……。
家に居場所がなく街を漂流するしかない。その結果、性的に危険な状況から逃れることを諦め、性被害に遭っても逃げ出せない少女もいる。
橘がつぶやいた。
「家が危険だっていう女の子たちがたくさんいるんだよ。たとえ一晩でもいいから、清潔なベッドに休めて温かい食事がとれる場所があったら全然違うだろうって思うんだよね」
10代と20代の彼女たちからの相談は月に3千件以上になる。事情を聞き、児童相談所や女性相談センターなどの行政支援につなげる。都内で運営する2軒のシェルターでは一時的な保護をしている。生活を立て直す時期の少女のためにマンションを借りて提供する。危険な目に遭っている少女たちがいないか、夜の街をパトロールする。

■困難に直面する女性を取材 彼女たちを尊敬していた
「BONDの橘」といえば、生きづらさを抱える少女たちの専門家と認識されている。
ところが本人は「福祉分野」と整理されることには居心地の悪さを覚えもするらしい。
「今はアウトリーチとか保護とか言ってるけどさ、そんな専門用語を知らない頃から、ケンちゃんと私、困ってる子がいたらうちに泊めて話を聞いたりしてたじゃん?」