周囲の大人が、その子どもがヤングケアラーであると気付き、児童相談所や包括支援センター、ケアを軽減するサービスなどにつなげられたとしても、それでヤングケアラーの問題が解決するとは限らない。

 神奈川県を中心に活動するSSWの安永千里さんは言う。

「子どもがケアを担っていた祖母が入院できたなど、ある瞬間を切り出せば成功したと言える支援はあるかもしれません。でも、その後にまた家庭内でいろんなことが起きているケースもある。彼らと一緒に伴走するような、継続的支援が必要です」

 ヤングケアラーについて実態の把握や支援が行われるようになってきた。しかし、「ケアや介護を担っている子どもは調査結果以上にたくさんいるのではないか」(朝日さん)という声もある。

 ヤングケアラーという言葉が広まるにつれて、彼や彼女らを「かわいそうな子ども」と決めつける大人たちもいる。だが、子どもたちの声を聞いていると、必ずしもそうではない。なぜなら、ケアを通じて「家族の役に立っている」と感じている子どもも少なからずいるからだ。

 SSWら現場からは、周りの大人たちがヤングケアラーに気付くこと。その上で、様々な選択肢を示し、子どもたち自らが選べるように手助けをすることが必要との声が聞かれた。

 ケアによって、子どもたちの可能性の芽が摘まれないよう、少しでも早い支援が望まれている。(ライター・奥田高大)

AERA 2022年9月19日号より抜粋

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