AERA 2022年9月19日号より
AERA 2022年9月19日号より

 中学生でケアを理由に進学を諦める場合もある。学校からSSWに相談が来るのが数カ月後に卒業を控えた時期で、時間が十分にないため、支援が限られてしまうケースなどだ。一方で、十分な時間があれば、ケアをしながら通学できる学校を薦めるなど、進学を「諦める」以外の選択肢を伝えることができる。

 当初はケアだと自覚していなかった子どもが成長するにつれ、家庭内でより大きな役割を担っていく傾向がある。一見すると、家族の日常は回っているようにも見える。だが、そのために子どもの「子どもらしい生活」や「将来に向けた選択肢」が、ヤングケアラーの人生から抜け落ちてしまうことがあるのだ。

 進学や就職など、成長に伴って大きく変化する環境。乏しい社会経験に起因する選択肢の少なさ。これら難しい問題を抱えるヤングケアラーに対して、朝日さんら現場のSSWが必要な対策として挙げるのが、孤立させないための場所作りと具体的な支援策だ。

「SSWによるヤングケアラー支援についての全国調査で必要な対策として最も多くあがったのが、本人が気軽に相談できる場所。二つ目が、子どもが行っているケアや家事を代行するサービス。三つ目が必要な情報提供という答えでした」(朝日さん)

 この3点は、いずれも筆者が、実際に複数のヤングケアラーの声を聞いた際に「あったらいいと思う支援」として、話していた内容と同じだ。

 悩みを話せる場所やケアの負担軽減とあわせて欠かせないのが、「将来に向けて、さまざまな選択肢を提示してあげることだ」と、都内で活動するSSWの菅江佳子さんは指摘する。

■自らが選べる手助けと継続的な支援が必要

 菅江さんは「子どもが担っているケアが適量なのかどうか。子どもが自分の人生を組み立てて、優先順位をつけたうえで家族のケアを行うのであれば、それはそれでいいのではないでしょうか」と話し、こう続けた。

「ただ、ヤングケアラーのなかに、そうした選択肢がすべてはぎ取られている子どもが存在することが大きな問題です」

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