人工衛星から送られる太陽風のデータを受信するパラボラアンテナ。NICT敷地内に設置され、常に太陽の側を向いている(photo 小山幸佑)
人工衛星から送られる太陽風のデータを受信するパラボラアンテナ。NICT敷地内に設置され、常に太陽の側を向いている(photo 小山幸佑)

 21世紀に新たに誕生しそうな職業がある。宇宙天気予報士だ。太陽活動など社会インフラに影響を与えるような宇宙環境の変動「宇宙天気」を、各種データから予測する役割を担う。自然災害と同様、宇宙天気によるリスクに備える必要があるという。AERA 2022年9月12日号の記事を紹介する。

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 総務省の有識者会議は検定制度に基づく「宇宙天気予報士」の輩出を提言している。その第1号として期待されているのが、NHK「ニュースウオッチ9」で気象キャスターを務める斉田季実治さん(46)だ。

 斉田さんは大学卒業後、北海道の民放で記者をしていた。地震や台風の被災地取材を重ねるうち、「被害を伝えるだけでなく、災害を未然に防ぎたい」と考え、民間の気象会社に転職。その後、NHKの気象キャスターに抜擢された。大学在学中に気象予報士の資格を取得していた斉田さんは、もともと宇宙に興味があり、子どもの頃は宇宙飛行士志望だった。宇宙への関心は気象キャスターとして独立した後も消えることはなく、19年に民間の「星空案内人」の資格を取得。宇宙天気に関わるようになったのは2年前、宇宙産業をリードする人材輩出に取り組む一般社団法人「ABLab(エイビーラボ)」で、「宇宙天気プロジェクト」に参加したのがきっかけだ。

 同プロジェクトマネージャに選出された斉田さんは仲間と、「宇宙天気予報士制度」の創設を提案。各種データを適切に処理し、科学的な予測を行う知識や能力を検定する気象予報士試験に準じた「宇宙天気予報士」養成の必要性を訴えてきた。

■大きな事故の恐れも

 21年のNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」では斉田さんが気象考証を担当した。ドラマの中で、お笑い芸人「もう中学生」さん演じる気象情報会社の社員が、社内の新規事業審査会で「宇宙天気プロジェクト」を提案するシーンがある。提案内容を「宇宙天気」にすることは斉田さんの希望で実現、脚本の元ネタは斉田さんが提供したという。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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