「意外と知られていないのですが、足の機能が原因でふくらはぎに負担がかかりすぎている場合もあります」(久保さん)
わかりやすいのは、普段使わない筋肉をたくさん使った時だ。
「普段運動しない人が急に走ったり、いっぱい歩いたりした日の夜はつりやすくなります。筋肉が過剰に働き、緊張が高くなったからです」(同)
足を酷使したという原因がはっきりしていれば、運動を控えたり、少しずつ運動量を増やして筋肉を慣らしていったりすればいい。ほかの理由としては、足の構造上の問題と、お尻や腿(もも)の筋肉の弱さがあるという。
まずは足の構造から。
人間の足には三つのアーチがある。(1)足の内側縦方向にある土踏まず(2)外側縦方向の小さなアーチ(3)親指の付け根から小指の付け根に向けて横方向にあるアーチだ。足が弓なりになっていることで全体重を支え、地面の蹴り出しを支えるバネの役割や、着地した時に衝撃を和らげるクッションの役割を果たす。
久保さんが説明する。
「扁平足が一番わかりやすいのですが、このアーチ構造が潰れていると、体の土台のバランスが崩れ、さらに蹴り出すバネの力が弱くなります。そして崩れた足の機能を補おうとしてふくらはぎの筋肉に負担がかかります」
久保さんによると、この状態を「代償」といい、放っておくと知らないうちにふくらはぎがパンパンになってしまうという。
足の筋力と柔らかさ(アーチ構造の強度)には相関関係があり、筋力が強くても扁平足だと、こむら返りが頻発しやすい。
「これが原因の場合、インソールを使ってアーチをサポートすると、ふくらはぎの負担軽減になります。ただし、インソールは視力を補うメガネのような役割で、それを使っているからといって、扁平足が治るわけではありません」(同)
お尻や腿の筋肉が弱いとどうなるのか。股関節から足を外側に広げる時に使う中殿筋と、足を後ろに引く時に使う大殿筋が弱いと、立っている時のバランスが悪くなり、歩く時も十分な蹴り出しができなくなるという。
「お尻の筋肉を補おうとして、ふくらはぎに負担がかかるからです。腿の筋力が弱い、骨盤や股関節の機能が弱い人も同様です」(同)
こむら返りの原因は複数あり、複合的な要因で起きている場合もある。自己判断は難しいため、頻発してなかなか改善しない場合は、専門医の診察を受けたほうがいい。
とはいえ自宅でできる予防法もある。まずはお尻の筋肉を鍛えるのが有効だ。
お尻や腿の筋肉を鍛えることは、こむら返りのリスク軽減だけでなく、運動機能向上のために必要だ。予防法はどれも手軽にできるものなので、ぜひ習慣化してほしい。(ライター・吉川明子)
※週刊朝日 2022年9月16日号