■信頼が強くなった

――川村と吉野、二人の絆もより深くなったという。関係性について、こう話す。

吉野:お互いの個人の活動もしっかりと見て、同じグループのメンバーとして応援しながら、「自分ももっともっと活躍したい」という刺激ももらえています。切磋琢磨する関係性を今後も続けていって、お互いが高みを目指していければ、グループに返ってくるものも大きい。チームとして個人としても、より羽ばたいていければいいなと思います。

川村:北人とはオーディションの頃から一緒で、同じ年齢でそれぞれ大阪と宮崎という地方から、歌もダンスも経験がない状態でEXILEに憧れて上京したという共通点があるんです。二人で動くことが多くなってより家族感が増し、信頼は強くなっています。

■フィルターがなくなる

――川村は10月に映画「貞子DX」の公開が控え、吉野は現在放送中のテレビドラマ「魔法のリノベ」に出演している。俳優としての仕事が増えているが、演じることとどう向き合っているのか。

川村:ある程度の期間、自分ではない人の人生を生きるっていうのはすごく面白いと感じます。ハイローの楓士雄役は特にそうでしたが、役から学べることが多くある。まだ、いわゆるクズの役を演じたことがないので(笑)、そういう役を演じた時にどういう気付きがあるかはわからないんですが、それもまた面白いのかなと思ったりしています。役を演じる時は、自分というフィルターがすべてなくなった状態になる。リミッターが一瞬で外れて、川村壱馬だったら絶対にやらないことを平気でできるのも面白いと思います。

吉野:近くにいて、壱馬は本当に演じることが好きなんだろうなと感じます。昔からやりたいと思っていたという熱も感じますし、芝居にもそれが出ている。やっぱり楽しむことは大切だと思うので、壱馬のそういう姿勢はすごく刺激になります。

 僕自身はまだ役者の面白さを探している段階です。芝居に正解はないと思うんですが、悩みながら、楽しみながら、自分なりの手ごたえを探しています。

――アーティストと役者、異なるフィールドで活動することをどう感じているのか。

■表現の幅が増した

吉野:特にライブで実感するのですが、アーティストはファンの皆さんと直でコミュニケーションを取りながら、リアルなものを生み出していくことができる仕事だと思う。映画やドラマは、撮り終わった後に作品が皆さんに届くという意味で時間差はありますが、共演者とは感情と感情をぶつけ合っているので、似ている部分がたくさんあると思っています。

 自分の向き合い方としても、音楽で曲の世界観に入るのと、俳優として役に入るのは、実はやっていることは一緒です。恥ずかしさを取り払って役に向き合うことで、歌う時の集中力が増して、よりよい歌が歌えるようになったと思っています。表現力の幅も増したと思う。アーティストとしての活動に、いい意味で還元できていると思います。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年9月5日号