TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。「音楽の力」について。
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新年もロシアによる攻撃は止(や)むことはない。
プーチンはウクライナ市民を標的にした攻撃を執拗(しつよう)に繰り返し、「空襲警報のない普通の、幸せな、喜びに満ちた生活に戻ろう」とゼレンスキー大統領が呼びかけたにもかかわらず、午前零時を過ぎた年越しとほぼ同時に首都キーウにミサイルが撃ち込まれた。
そんな時代だからこそ、僕は音楽の力を信じようと思った。
昨年師走、桑田佳祐さんの東京ドームライブ「お互い元気に頑張りましょう!!」で披露された『ROCK AND ROLL HERO』が強烈なプロテストソングだったと改めて気づいて心が揺さぶられ、NHK紅白歌合戦ではゲストに大友康平さん、原由子さん、ハマ・オカモトさんを迎えた、桑田佳祐さん×佐野元春さん×世良公則さん×Charさん×野口五郎さんの“同級生バンド”による『時代遅れのRock’n’Roll Band』の一節、
“この頃「平和」という文字が朧げに霞んで見えるんだ”
を聴き、大みそかの夜に、遥か遠くで迫害にさらされているウクライナの人たちの生活に思いを馳せ、同時に、現在の日本の姿を案じざるをえなかった。
コロナ禍と格差、経済の劣化と相次ぐ閣僚の辞任など、てんやわんやの政府は負のイメージを払拭せんとばかりに年の瀬になって「反撃能力」という名で「敵基地攻撃能力」を持つという安全保障政策の大転換を図り、軍備増強論とそれを支える防衛増税を発表、そんな姿勢に慣れでもしたかのごとく国民は沈黙を決め込んでいるようにも見える。
ベトナム反戦で多くの若者が立ちあがった1960年代後半は、ラブ&ピースという旗印のもとウッドストック・フェスが開かれ、多くの反戦歌を世界中のラジオ局がオンエアしたが、それから半世紀以上経て、忌野清志郎さんも亡き現在、体制に安易に与(くみ)しないロックのたいまつを桑田さんは高く掲げ続けている。