折しもウクライナの平和を祈り、ジェームス・テイラー、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダーらが歌い継ぐプロテストソングを特集した『村上RADIO特別版 戦争をやめさせるための音楽』が日本すべての民間FM局で順次再放送され、ディスクジョッキーの村上春樹さんは「(音楽には)聴く人に『戦争をやめさせなくちゃならない』という気持ちを起こさせる力はある」とマイクに向かっている。
テレビ朝日の番組にゲスト出演したタモリさんは、2023年を「新しい戦前になるんじゃないか」と発言して話題になったが、アーティストや表現者は時代の風を鋭敏に感じ取り、その思いを作品に込める。そこには忖度(そんたく)などない。
師走ということもあり、桑田佳祐さんのステージに触れながらその年の様々な思いが去来した。
東京ドームの大画面には一曲一曲歌詞が映され、メロディーにのせて口ずさむと涙があふれた。大団円にはマスクが涙を隠すのに役立った。
桑田さんの歌声に合わせてドームに集まったみんなと一緒に口ずさめば、どこからか大きな力が湧いてきた。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中
※週刊朝日 2023年1月27日号