FBIがトランプ前大統領の自宅「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索した際、同氏は不在で弁護士が対応した。安倍晋三元首相がゴルフを楽しんだ場所も近い/米フロリダ州(ロイター/アフロ)
FBIがトランプ前大統領の自宅「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索した際、同氏は不在で弁護士が対応した。安倍晋三元首相がゴルフを楽しんだ場所も近い/米フロリダ州(ロイター/アフロ)

 全米各地で進んでいるトランプ氏への調査・捜査の中で、主なものは(1)昨年1月6日に発生した連邦議会襲撃事件に関する下院特別委員会(1.6委員会)の調査(2)ニューヨーク州の検察によるトランプ氏の会社「トランプ・オーガニゼーション」の詐欺案件についての調査(3)2020年大統領選挙の後、トランプ氏がジョージア州務長官に電話し、当選するための票を「見つける」ように要求したとされる刑事事件捜査──などである。

 こうした調査・捜査中にFBIが家宅捜索をしたので、トランプ氏の逮捕が近いという強烈な印象を与えたわけだ。

 なかでも1.6委員会による公聴会の行方が注目を集めている。20年大統領選挙で敗北したトランプ氏は昨年1月6日、ホワイトハウス前で集会を開き、「選挙(票)が盗まれた。議事堂で会おう」と演説。その後、極右過激派市民を含む支持者数千人が議事堂内に侵入するなどして、防御にあたった警官と暴徒の双方に死者が出た。1.6委員会は、過激派などと共謀して事件を扇動したのではないかというトランプ氏の「責任」を徹底追及している。

「反トランプ」派が敗北

 そこで頭角を現したのが、ディック・チェイニー元副大統領の娘リズ・チェイニー下院議員(共和党、ワイオミング州選出)で、同委員会の副委員長を務める。共和党員の8割がいまだにトランプ氏を24年大統領選候補として待望している最中、同委員会で2人しかいない共和党議員の一人だ。しかも、公聴会でトランプ氏を糾弾する発言や質問を繰り返している。

 彼女は「反トランプ」という党内少数派であるがために、議員生命すら失った。ワイオミング州で8月16日、今年11月の中間選挙に向けた共和党の予備選挙があり、トランプ氏が推薦した弁護士のハリエット・ヘイグマン氏に敗北したのだ。来年1月、下野することになる。しかし、「反トランプ」を貫いた。敗北演説では、

「昨年1月6日以来、ドナルド・トランプが二度と大統領執務室に近づかないようにするために必要なことは何でもすると言ってきたが、それは本心だ」

 と強調。米メディアは、彼女が24年大統領選挙に立候補する可能性すら指摘している。さらに、

「(トランプ氏の主張と同じく)大統領選挙の結果を否定する候補が当選しないよう、やれることはすべて確実にやっていくことに集中する」と米ABCテレビで発言。支持者から集めた寄付金を、トランプ氏推薦の候補と対立する候補や、場合によっては民主党候補に寄付することを表明した。

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