■実動部隊を失う恐怖

 組合員は選挙が告示されると、すべての公営掲示板に即座にポスターを貼ってくれる。駅頭でビラを配ることにも協力的だが、教団の力は、比較にならなかった。男性は振り返る。

「戸別訪問で、ポスターを貼ってもらう活動力に舌を巻いた」

 10軒回っても、ポスターを受け入れてくれるのは1軒あるかどうか。費用対効果が悪く、組合員は嫌がる。しかし、教団信者はいとわず、次々とポスター貼りの依頼を成功させていた。

「霊感商法で培われた『セールストーク』や嫌がられてもお願いできる押しの強さがあった」

 教団からは信者派遣の報酬を求められた。男性は言う。

「当選後に『使える』と思った政治家は無報酬だろうが、私のような野党議員は『使えない』という判断をしたのだろう」

 教団との関係は最初の選挙だけ。その後、別の宗教団体の支持を得たが、選挙が近づくと、自分たちの施設内にポスターを貼ってくれる程度で、統一教会の信者ほどの熱量はなかった。

 男性は、あちこちでポスターが貼られている議員をみると、こう考えてしまう。

「従業員が多い建設業者の支援を受けているか、お金で業者にお願いしているか、教団との関係が深いか。どれかだろう」

 教団が全国に持つ票は、多く見積もっても10万票程度と言われる。宗教団体の創価学会を母体に持つ公明党は、衰えたとはいえ全国で600万票を下らない。自民党関係者は言う。

「教団票なんて、学会票に比べれば、たかが知れている。党として関係を全面的に断っても痛くもかゆくもない。ただ、弱い後援会しか持たない議員にとっては票数の問題ではない。教団と縁を切ることは死活問題。選挙の実動部隊を失う恐怖があるのだろう」

(朝日新聞論説委員・蔵前勝久)

AERA 2022年9月5日号より抜粋

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