■プロ注目は浅野翔吾

 仙台育英は文字通り「全員野球」で栄冠をつかんだが、今大会はプロ注目選手の活躍も目立った。筆頭格は高松商(香川)の浅野翔吾だろう。今大会通算10打数7安打、打率7割、3本塁打をマーク。チームを52年ぶりのベスト8に導いた。初戦・佐久長聖(長野)戦で2打席連続本塁打を放つと、準々決勝の近江(滋賀)戦では敗れたものの、プロ注目右腕・山田陽翔から3安打。圧巻は三回の一撃だった。1死一塁で146キロの直球を振り抜き、弾丸ライナーでバックスクリーンへ。並外れた長打力だけでなく、ミート能力も高いうえに俊足で、野球センスの塊だ。ドラフト1位で複数球団による争奪戦は間違いない。

 近江の山田は投打の「二刀流」で見せるパフォーマンスが高校生離れしていた。スライダー、カットボール、カーブ、ツーシームと多彩な球を操り、スタミナもある。プロでも投手として挑戦するとみられ、ドラフトでの上位指名が予想される。

 大阪桐蔭の松尾汐恩は強肩強打の「高校ナンバー1捕手」。今大会で同校史上3度目の春夏連覇はかなわなかったが、打率5割7分1厘、2本塁打、9打点をマークした。強気な性格もプロ向きだ。昨秋のドラフトでロッテから単独1位指名された市和歌山の松川虎生と比べても、能力では見劣りしない。

 天理(奈良)の遊撃手・戸井零士はパンチ力のある右打者でプロからの評価は高い。目標とする浅村栄斗(楽天)を彷彿とさせる打撃スタイルで広角に長打が打てる。まだまだ発展途上で飛距離も伸びるだろう。

 潜在能力の高さで言えば、九州学院(本)の村上慶太も引けを取らない。打撃フォームは兄のヤクルト村上宗隆にそっくりで、身長190センチの体格は兄を上回る。変化球への対応力、スイングの修正など課題は少なくなく、高卒2年目で主力打者となった兄とは違って大成するまでに時間はかかるかもしれない。だが、野手のグラブを弾くような弾丸ライナーに大きなロマンを感じさせる。(ライター・梅宮昌宗)

AERA 2022年9月5日号

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