だがこんな日々が続くうちに、茂子さん夫婦も「体力的にきつい」と感じることが増えていった。孫を保育園に迎えに行く前に夕飯の支度をし、夕食を食べて娘が帰宅するまでは座る暇もないほど目まぐるしい。日に日に成長し、動き回る上の子どもと一緒に遊ぶだけでも一苦労だ。
加えて、コロナ禍の影響で急に保育園が休みになることも増えた。そのたびに娘から“要請”コールが鳴り、共働きの娘夫婦に代わって、一日中孫の面倒をみることになる。娘の会社ではリモート勤務も導入されているが、「ウェブ会議もあるから預かっておいてほしい」。自宅でパソコンに向かって仕事をする娘とは別の部屋で孫をあやしながら、微妙な気持ちになったことは一度や二度ではない。
それというのも、最初のころは「ありがとう」「負担をかけてごめんね」と気遣う様子を見せていた娘だったが、次第に「やってもらって当たり前」という態度が透けて見えるようになってきたからだ。「お母さんは毎日のように孫に会えて本当に幸せだよね。遠くに住んでいると年に1、2回しか会えないんだから」とあっけらかんと話す娘を前に、唖然としたこともある。
孫は可愛くて仕方ないし、娘夫婦もできるだけ助けてやりたい。だがこんな日々がいつまで続くのだろうと、つい考えてしまう──。
夫婦共働きが当たり前となった今、共働きの子どもに代わり、祖父母が育児を担う機会が増えている。最初のうちは「可愛い孫の面倒なら、いくらでもみる」と前のめりでも、育児負担がエスカレートしていくと、穏やかではいられないときもある。
■口で発する言葉と本音は違う
「互いに本音で話せれば良いのですが、それぞれの立場や関係性もあり、そうは簡単にいかないのもこの種のトラブルの特徴。第三者から見たら些細なことであっても、当事者にとっては尾を引くような出来事になったりするから厄介です」
こう話すのは、自身も孫を持つ祖母であり、『孫育ての新常識』などの著書で知られる子育てアドバイザーのおやのめぐみ(小屋野恵)さん。おやのさんの周りの同じ世代でも、「孫のことで子どもたちと揉めた」といった本音がよく聞かれるという。子ども世代からも、子育てが絡むことで、両親や義父母への不満や愚痴がこぼれ出てくることも少なくない。