「祖父母世代からの悩みとしてよく聞かれるのは、近くに住む娘から頼られすぎてしまうケースです」

 孫育てに関する講演やイベントを行うNPO法人「孫育て・ニッポン」で理事長を務める棒田明子さんは言う。中でも多いのが実母と娘とのトラブルで、互いに遠慮がないからこその関係が思わぬ火種になることもある。

「例えば急に子どもを預かってほしいとき、義母に対しては“急なお願いで申し訳ありません”と丁寧な物腰で言うところが、実母には“預かってもらえるよね?”となったりする。日常化してしまうとどうしても疲れるし、“やって当たり前”と思われて良い気持ちがする人はいない」(棒田さん)

 子ども世帯に孫の世話を頼まれると嬉しい半面、寄りかかられすぎるとつらい面も出てくる。どこかで無理をしているのであれば、それが当たり前になることは避けたほうがお互いのためだ。

「行くのは本当に大変なときだけと決めたり、『3回に1回は断る』と決めるのも手。『好きでやってるんでしょ?』と言われて、『そうよ~』と気軽に言えないなら、“やりすぎ”のサイン。孫の世話は少しセーブして、自分の時間を持ちましょう」(おやのさん)

 子どもや孫のために、良かれと思ってやったことが思わぬ仇となることもある。佐藤鈴江さん(仮名・62歳)は、遠方に住む息子夫婦の子のため、得意の裁縫を生かして子ども服を作っては、食べ物と一緒に箱に詰めて送るのを毎月の楽しみにしていた。フリルたっぷりのワンピースやスカートをこれまで何枚作ったかわからない。共働きで忙しい息子夫婦を思い、手軽なレトルト食品なども詰め込んで手配していた。毎回、嫁からは「ありがとうございます!」と嬉しそうなスタンプ付きのLINEが届く。「今月も喜んでもらえた」という実感がまた次のモチベーションとなるのだ。

 ところがある日のこと、息子から「ちょっと遠慮してやってくれるかな」とLINEが届いた。聞けば、鈴江さんの作る子ども服は「あまり好みじゃない」のだと言う。これまで何着も作った服は、“お蔵入り”しているものがほとんどらしい。さらに息子夫婦は子どもが生まれてからというもの、食品や野菜はオーガニックのものにこだわるようになったという。だから鈴江さんの送るレトルト食品類は、食べずにたまっていく一方で「これ以上、毎月送られると困る」。嫁もこれまで遠慮して言えなかったが、「これが続くとお互いに良くない」と、夫である息子に「それとなく伝えてほしい」と頼んだのだという。

「そのときはムッとしましたが、冷静になってよく考えたら、私も押し付けのように定期便を送ってしまっていたなと……。口で発する言葉と本音は違うのだということを痛感しました」(鈴江さん)

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