この瞑想を1日に1分でも2分でも、短時間でいいので、毎日続けてほしいと川野さんは話す。雑念を感じて、呼吸に意識を戻していくと、「雑念がいろいろな雑念に変わり、その気づきが大事」と話す。「自分で自在に注意の切り替えができるようになる」という。

 川野さんによれば、心の受容性が高まっていく。いったんは受け入れて、感情をうまく調整できるようになり、穏やかな心で過ごせるようになる。川野さんは「1日に5分程度、1年以上、続けると身になると伝えている」と話す。

 修行を積んだ禅僧の瞑想は特別なものなのだろうか。川野さんは「その瞬間に全身全霊を打ち込んでいるだけ」という。そうしていると、「ひらめきが生じることがある。たとえば鳥の声が美しく聞こえることがある」という。これは、感性が開かれていくからだと。生きていて楽しくなるのだともいう。

 一方、うつ病の患者は、重症になると、すべての感覚が閉ざされていく。

 川野さんが勧める瞑想は、問題や課題の解決にもつながる。たとえば、掃除、整理整頓が苦手な人は、課題を意識し、理想的な部屋をイメージして、瞑想する。途中でいろいろな発想が出てくるという。たとえば、本は大きさ別に並べて本棚に入れてみようとか。川野さんは「アイデアが出てくる」と話す。

 現代人は、「マルチタスク」に疲れ切っているという。マルチタスクをシングルタスクにすることで、脳が効率的に働くようになる。日ごろの生活で、一つのことに意識を置き、一つのことだけをする。これを、川野さんは「生活瞑想」と呼ぶ。

 瞑想する際の注意点もある。うつなどの精神疾患に罹患している人は「一つの対象に集中する瞑想が不向きな場合があるため主治医と相談してほしい」と話す。

 普段の生活に瞑想を取り入れ、明るく前向きな気持ちになれるといい。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年9月2日号

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