
映画の骨子は決まった。次は制作面での動きだ。
「低予算ながらも予算を集めなければならない。スタッフやキャストもそうです。そこは僕の経験も交えて、どの人にどんなことをお願いすればいいのかを考え、はめ込んでいくような作業をしました。自主映画でデビューして、Vシネマや成人映画、言い方はあれですが、どちらかといえば『負け組』の側を軸にずっとやってきているんですね。だから、限られた材料でどう勝負すればいいのかということには長けていたのかもしれません。集めたスタッフ、キャストもそういう面々が多いので、短期間で低予算でうまくまとめられたところもあったと思います」
演じる以外の部分でも動きまわっていたわけだ。
「実はクライマックスの大立ち回りで、僕に殴られる人たちの中には、これまで付き合ってきた監督たちが何人もいるんです。殴ることが、今までのお返しだみたいな(笑)。気がつけば自分の周りに監督たちが倒れている。ある種の個人的復習を果たした瞬間でしたね(笑)」
趣味は、「釣りしかないです」という。
「ロケの仕事が多いので、どうしてもどこかの地方に一定期間拘束されることが多いんです。そういう土地ではたいてい近くに川や池、海などがありますからね。人と会わずに会話もせずにいられるところもいい。釣れなくても投げているだけで楽しい。コロナ禍でそれをより強く感じ、心の慰めにもなりました」
公開を待つばかりだが、こんな思いをこめる。
「映画の世界ぐらいは、ある種の爽快感がある物語に最終的にできればいい。撮影はコロナ禍に突入するよりも前でした。『自粛警察』とかもありましたが、現実の世の中がどこか作中のディストピアみたいな空気に偶然にも重なってしまった。そんなストレスがかかる世の中だからこそ、脳みそをからっぽにするような感覚でちょっとでも笑ってもらえたり、スカッとしてもらえたら」