ウクライナ侵攻以降、暗いイメージで捉えられがちなロシア。だがロシアにも、普通の人々の暮らしがある。本当のロシアとはどのような国なのか。AERA 2022年8月15-22日合併号は、近くて遠い国、ロシアを知ることができる映画、小説の7作品を紹介する。
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映画でロシアを知るには何がいいか。歴史研究者で『ロシア史 キエフ大公国からウクライナ侵攻まで』(朝日新聞出版)監修者の祝田秀全(いわたしゅうぜん)さんは言う。
「ロシアの内と外、それぞれの角度から様々な事象を描いた映画を見ることで、ロシアを多面的に見ることができます」
内からの映画としてまず挙げるのが「アレクサンドル・ネフスキー」。13世紀のロシアに実在した名将の名前だ。
ネフスキーは東進してくるドイツ軍を打ち破るなど、ロシアの英雄として名を馳せる。だがロシアの権力者になるため、モンゴル人のキプチャク・ハン国に臣従し、ハン国のキエフ公国への侵攻が始まるとハン国と一緒になってキエフ公国を滅ぼす。
「そこからロシアという国が始まりますが、今のロシアの源流をたどると、このアレクサンドル・ネフスキーという一人の人物にいきつきます」(祝田さん)
ロシアにおける血なまぐさい権力抗争をコメディーでグイグイと押してくる映画というのが「スターリンの葬送狂騒曲」。
「スターリンの死に始まるマレンコフ、ベリヤ、フルシチョフ、ブルガーニンら側近4人の権力争奪劇です」(同)
ロシアの国情があぶり出される作品がアニメ映画「ジョバンニの島」だ。舞台は、第2次世界大戦後まもなくの色丹島。平和な日常は、大戦終結後の1945年9月1日に始まるソ連軍の島への侵攻によって一変する。
「兵士は民家に押し入り、金品を奪い、学校に入っては子どもたちに銃を向けます。こうしたロシアのやり口は、遠い過去の歴史ではなく、今のウクライナ侵攻につながる現在です」(同)