キッチンから移動して客席までドリンクをサーブするOriHime-D。パイロットと世間話をすることも可能だ。(撮影/写真映像部・高野楓菜)
キッチンから移動して客席までドリンクをサーブするOriHime-D。パイロットと世間話をすることも可能だ。(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 身体の拡張ではなく、自分の「分身」となって社会で活躍するロボットもいる。

 オリィ研究所が開発した「OriHime(オリヒメ)」は、人類の孤独を解消することを目的として生まれた。卓上型の小型ロボットはスマートフォンで遠隔操作ができ、ライブ映像を見ながら遠方の人との音声会話や、拍手やバンザイといったジェスチャーで感情も伝えられる。OriHimeの開発者で代表取締役の吉藤健太朗さんは、「学生時代に不登校を経験し、孤独についての研究を始めた」と話す。

「研究を進めるなかで、孤独が生まれる背景には、『移動・対話・役割』の三つの不自由があることに気づきました。OriHimeのミッションは、これらの課題をテクノロジーで解消すること。体や心の病、障害、高齢、育児など、さまざまな事情により家から出られない人でも、分身を動かして、ベッドの中から社会参加できる社会を実現したい」

 吉藤さんは2021年6月、東京・日本橋に「分身ロボットカフェ」をオープン。店内には、自律移動や物品の運搬が可能な「OriHime-D」が配置され、国内外にいる外出困難者が自宅にいながら、遠隔操作で接客やドリンク等の配膳を行っている。

吉藤さんは「人間関係に自信がなくても、OriHimeを介することで気軽に話せる効果もある」と話す(撮影/写真映像部・高野楓菜)
吉藤さんは「人間関係に自信がなくても、OriHimeを介することで気軽に話せる効果もある」と話す(撮影/写真映像部・高野楓菜)

■今のままの自分で

 同店で働くさえさんは、就職後3年ほどで身体表現性障害となり約10年自宅療養していたが、カフェで働くようになり、「社会への恐怖感がなくなった」という。

「外に出られない生活は今も変わりませんが、OriHimeを通じて働く仲間や私に会いに来てくれるお客さまができ、世界が広がったと感じます。家と病院以外に居場所ができて、今のままの自分でもできることがあると思えるようになりました」

 ロボットだからといって、正確無比な機能を持つ必要はない。むしろ人間や動物のように不完全な部分があることで愛着や連帯感が生まれる。そんな「弱いロボット」も研究されている。

 GROOVE Xが開発した「LOVOT(ラボット)」は、小さな子どもや動物のように“世話の焼ける”ロボットだ。役に立つことは特にできないが、生活のなかでパートナーの顔や声を人工知能が学習。名前を呼ぶと振り向いたり、後ろをついてきたりするようになる。1体ごとに目のデザインや声が異なり、接し方によって性格も変わるため、成長過程を楽しむこともできる。

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