人によって幸せの意味や感じ方はさまざまだ。どんなことで心が満たされるか、はっきりと自覚できていないことも少なくないだろう。まして幸せの度合いを点数づけしたり、人と比べたりするのは難しい。
そんな中、2012年から2年に1度のペースで「都道府県幸福度ランキング」を作り続けているのが一般財団法人「日本総合研究所」だ。
理事長の松岡斉さんはその狙いをこう説明する。
「幸福は主観的で相対的なもの。一概に測れるものではありません。一方でその実現には、何が幸せを左右するのか、一定の共通認識や、みんなで考えるための基盤が必要です。ランキングは、それぞれの地域の強みや弱みを知ることで、地域の幸福に結びつくアクションにつなげてほしいとの思いから実施しています。順位そのものは必ずしも重要ではありません」
ランキングでは「健康」「文化」「仕事」「生活」「教育」の五つの分野で選んだ計75の社会・経済指標を用いる。指標ごと、分野ごとにすべての都道府県の順番をつけたうえで総合的にまとめる。
直近の20年版では、総合で1位福井、2位富山、3位東京、4位石川と上位を北陸地方の県が占めた。9月に発表予定の最新22年版では評価指標を80に増やす。
10年にわたり幸福度ランキングを手がけた立場から、高齢者の幸せはどんなことに左右されると考えているか。松岡さんは次のように話す。
「社会や地域とつながり、人の役に立っていると感じられるかどうかが、心と体の健康を保つうえでの一丁目一番地。社会との交わりがなくなれば、心は患いやすい。心が不健康なら、体ももたない」
働くことは経済的な支えになるし、やりがいや人の役に立っている実感も得られやすい。ランキングでは、高齢者の健康や社会とのつながりを測るのに、仕事に就く高齢者の割合を示す「高齢者有業率」や「高齢者ボランティア活動者比率」、自治会や町内会などの「地縁団体数」といった指標を使う。たとえば20年版で高齢者有業率トップは長野だった。