週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
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 日本総研とは別に、11年に「47都道府県の幸福度」をまとめた元法政大学教授の坂本光司さんも、シニアが幸せに生きるためには「人のために尽くすことが大事だ」と強調する。

「強制したりされたりするものではありませんが、生きている限りは、働いたり学んだりして世の中のために役立つべきだと思っています。年を重ね経験を積んだ高齢者として、自分の欲求のためだけに時間を使うのは少し寂しい。人のために尽くすことは、社会だけでなく自身の幸せにもつながる。その意味で、『有業率』や『離職率』などの指標を使い、働いたり学んだりする環境が整っているかを重視しました」

 とはいえ、これらはあくまで数ある指標の一つ。前出の松岡さんは「指標の設定方法に毎回苦労している」と打ち明けた。

「ランキングを作る側には何かしら目的や意図があるもの。私たちの究極的な目標は、たとえ裏切られても人のことを信頼し、思いやれるようなゆとりを持った社会や地域をつくることです。まわりの人から頼られたり、頼ったりできない社会では幸せになりにくい」

 編集部では今回、都道府県単位より細かく地域の幸せ度合いを調べられないかと考え、市区町村別のデータを探った。だが松岡さんや坂本さんが教えてくれた有業率をはじめ、政府がまとめる指標の中には市区町村別、かつ高齢者間で比べられるものは思いのほか少なかった。

週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
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 把握できた中から、健康や暮らし、命にかかわる「平均寿命」「60歳以上の自殺死亡率」「65歳以上の人口あたりの病院数」「買い物難民の割合」の上位15市区町村を並べた。これらも地域の幸せを考えるうえでごく一部にすぎず、結果から地域性や法則をはっきり見いだすのも難しい。それでも松岡さんが言うように、データからは多かれ少なかれ、地域の強みや弱みの一端が読み取れるはずだ。

週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
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 各地域も幸せのあり方を模索している。茨城県は3月、独自に選んだ38の指標をもとにはじき出した「幸福度に関する都道府県ランキング」を発表した。民間シンクタンクが発表する「魅力度ランキング」で同県は最下位の常連だが、今回は9位に入った。大井川和彦知事は、「課題がどこにあるかを見つけ、対策をとることが重要」と述べ、今後の政策づくりに生かす考えを示した。

週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
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 幸せとは何か、自分なりの「ものさし」を探してみよう。(本誌・池田正史)

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