「築年数が50年を超える物件でも、離島にある物件でも、適切な値付けをすれば必ずニーズはあります。むしろ掲載物件が足りないくらいです」と話すのは、東京都渋谷区で不動産売買サイトを運営する家いちば株式会社代表の藤木哲也さんだ。

■売り主と買い主 直接売買交渉

 同社が運営する掲示板サイト「家いちば」には、月に60~90件の空き家の掲載依頼がある。その多くは、山中に長年放置されていたり、大量の残置物がある“訳アリ物件”だが、驚くことに月当たり15~20件売買が成立。これまでに600件の空き家が売れたという。

 藤木さんは、「空き家問題の背景には、中古住宅の流通システムが空き家の売買に適応していなかったことがあります」と話す。

「空き家問題が騒がれるようになって以降、全国の自治体が窓口になって空き家情報を提供する『空き家バンク』が普及しましたが、物件の仲介や契約に伴う業務は地元の不動産会社に委託されているため、流通システムそのものは既存のままなのです」

 既存のシステムでは、不動産会社が、低廉で需要があるのかどうかわからないような空き家を扱うには負担が大きすぎるという。

「不動産会社が得られる仲介手数料は売価の3~5%と、法律で上限が決められています。そのため売価が数百万円からそれを下回るような物件になると、利益どころか持ち出しになってしまうことも。しかも手数料は成功報酬で、売れない限り一円も売り上げがありません。築年数の経った田舎の空き家は、未登記や境界不明の問題を抱えているケースも多く、そうなるとなおさら契約手続きが煩雑で労力がかかる。その割に、売れてもお金にならないので、不動産会社としても空き家の取り扱いに腰が引けてしまうのは無理もありません」

 こうした事情から、不動産屋に空き家売却の仲介を依頼しても、解体やリフォームを勧められたり、実際の資産価値よりも数百万円高く売り出されたりするのだという。その結果、放置される空き家や、売れ残る空き家が増加していく。

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