帯状疱疹後神経痛の場合、アセトアミノフェンなどの痛み止めは効果を期待できない。治療は神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリン)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、神経ブロックが中心となる。効果が出なければオピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)を使用することもある。
しかし、誰にでも効く薬はない。副作用もあるため、症状やからだの状態に合わせて薬を選択していく。
帯状疱疹は、80歳までに3人に1人はかかるとされる身近な病気だ。最近はさらに急増していることが話題になっている。
新型コロナウイルスの感染が、帯状疱疹の発症因子になるという米国のデータがあるほか、コロナワクチンとの関連も指摘されている。
「帯状疱疹は、コロナが流行する前から増加傾向にあります。特に20~40代の若い世代で増えています。一因は水ぼうそうにかかる子どもが激減したことです」
2014年から1~2歳児を対象に水痘ワクチンの定期接種が開始された。水ぼうそうの患者が減ると、帯状疱疹の患者は増える。大人は水ぼうそうの子どもと接触することで水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が増強し、帯状疱疹の発症を抑えられるためだ。
帯状疱疹は、ワクチンによっても予防できる。50歳以上を対象に16年から「水痘ワクチン」、20年から「不活化ワクチン」が接種可能だ。
この2種類はどう違うのか。帯状疱疹の発症、帯状疱疹後神経痛への移行ともに不活化ワクチンのほうが予防効果は高い。免疫抑制剤や抗がん剤を使用している人でも、接種できる。
一方で費用が高く、迷うところだ。
「高齢者や基礎疾患がある人は、水痘ワクチンだと免疫が上がり切らないので、不活化をおすすめします」(渡辺医師)
帯状疱疹は命に関わる病気ではないが、長く続く痛みは人生の楽しみを奪う。年を重ねたあとの日々を楽しく過ごすためにも、予防について考えたい。(ライター・中寺暁子)
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号