イラスト・今崎和広/週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より
イラスト・今崎和広/週刊朝日 2022年8月19・26日合併号より

 中島さんは、抗ウイルス薬と痛み止めを1週間服用したところ、発疹は徐々に改善した。問題はここからだ。翌週になると痛みが強くなり、話すのも呼吸をするのもつらく、食事がのどを通らない。寝つけず、ようやく眠れても2時間くらい経つと目覚めてしまう。そんな日々が続いた。

「最初の痛みに比べると10倍増しの感覚です。洋服が触れるだけでもピリピリして痛く、下着はつけられませんでした」

 実は中島さんは、皮膚科を受診したときに医師から「(抗ウイルス薬が効く)ぎりぎりのタイミングですね。万が一痛みが残ったらペインクリニックを受診してください」と言われていた。そこで近くのペインクリニックを受診し、神経ブロック(硬膜外麻酔)と神経障害性疼痛治療薬「ミロガバリン」による治療を受けた。週に1回通院し、1カ月ほど経つと徐々に痛みが軽くなり、2カ月後には出社できる日も増えた。

「帯状疱疹後神経痛と診断され、ネットで調べると、10年苦しんだ人もいて不安になりました。ただ、神経ブロックの注射を打ったあとは半日くらい痛みから解放されるので、少しずつ気は楽になっていきました」

 3カ月後には痛みがなくなって完全に職場に復帰し、現在は趣味のゴルフも再開している。

 発疹が治ったあとに続く痛みは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、帯状疱疹になった人のうち、50歳以上の約2割が移行すると言われている。移行しやすいのは、高齢者や帯状疱疹発症時の発疹や痛みが重症だった人だ。

 帯状疱疹の痛みは、主に炎症によるものだが、帯状疱疹後神経痛の痛みは、神経を損傷したことによるもの。愛知医科大学病院皮膚科教授の渡辺大輔医師はこう話す。

「帯状疱疹の治療が遅れると、神経の損傷が悪化し、痛みが残りやすくなります。中島さんのように発疹が出てもかぶれや虫刺されだと勘違いするのはよくあるケースです。かぶれなどの場合、かゆみが強いことが多いですが、自分で判断するのは難しいので、帯状疱疹の可能性も考え、早めに皮膚科を受診してください」

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