「アルゴリズムで自殺に関連した投稿が表示されると、死んだほうが楽なんじゃないかと、希死念慮が刺激されてしまうことがあるので、SNSを断つように伝えています」

■つながり続けるために

 理性的に判断できる状態であれば、自分とネットとの距離を測ることもできる。だが、希死念慮を抱く人にとっては、コミュニティーから抜け出すこと自体が難しい。末木教授は言う。

「そこに居続けるために自殺願望を持ち続けないといけないという悪循環が生まれることもあります」

 自分の周囲に複数のコミュニティーがあれば、問題が起こった時や自分が変われそうだと感じたときに、距離を取りやすい。だが、希死念慮があると、人は孤独感を抱きやすく、「死にたい」という感情が唯一のつながりになっていることも多い。選択肢が限られるため、他の場所に移りづらいという。

 SNSを介して出会った人に殺害される事件も起きている。1月には、本人から依頼を受けて女子高校生を殺害しようとしたとして、さいたま市の男性が再逮捕された。この男性は、昨年9月にSNSで知り合った自殺願望のある女子中学生の自殺を幇助したとして、逮捕・起訴されていた。10月にも、北海道の女子大学生がSNSを介して出会った男性に殺害される事件が起きた。男性は、女子大学生から依頼を受けて首を絞めたと話しているという。

 SNSと死の連鎖から逃れるために、何ができるのか。末木教授は、SNSだけの問題ではないと指摘する。

「アカウントがなければ知り合うことはなく、事件に巻き込まれることはなかったかもしれません。ただ、その手前に子どもや若者を追い詰める要因があった可能性もあり、問題は一つではないんです」

 死にたいと感じたとき、助けてと言える社会が必要だ。(編集部・福井しほ)

AERA 2023年1月23日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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