「被疑者と統一教会とのつながりについて」と題する警察捜査報告書(83年11月27日付)には、次のように記されていた。

<Aが所属するグリーンヘルスという会社は、世界基督教統一神霊協会(統一教会)および主義思想を同じくする、異名同体の国際勝共連合の思想教育を受けた者の集りであることは本年一一月一五日に被疑者宅を捜索した際、同所で事情聴取したH(三一)、M(三七)、N(三一)らの申し立てから、明らか>

 霊感商法の商品は、統一教会の本部がある韓国でつくられていた。当時、壺や多宝塔の製造元だったのは「一信石材工芸」、高麗人参濃縮液を製造していたのは「一和」。ともに統一教会の関連企業だった。前出の藤森氏は渡韓し、両社の本社や工場などを訪れた。

「壺などの原価がわかったことが大きな成果だった」と藤森氏は語る。

 一信石材工芸の事業報告書によると、86年の販売実績は花瓶が2万3900個で約33億、石塔が2454個で約72億ウォン。ほぼすべてが輸出されていた。その多くが日本向けと見られている。

 当時、1ウォン=0.2円(現在は0.1円)で1個あたりの平均価格を計算すると、壺が約3万円、石塔が60万円程度。一方、86年に神奈川県消費生活課がまとめた被害の実態によれば、霊感商法による1個あたりの平均購入額は、壺147万円、多宝塔911万円。法外な値段で売りつけていたことが実証された。

 高麗人参濃縮液は、一和本社内の売店で1瓶買うと、30グラム入りで6100ウォン(約1200円)。日本の霊感商法では300グラム入りがだいたい8万円で売られており、6~7倍の価格になる(87年3月27日号)。

 ちなみに、キャンペーン報道が続いていた87年春、朝日ジャーナルの編集長は筑紫哲也氏から伊藤正孝氏に交代した。筑紫氏は同年4月10日号の巻頭コラム「多事争論」で、こう警告している。

<「霊感商法」についての本誌の“突出報道”に対して相手方が社に行った激しい抗議のなかに、私のような人物を編集長に据えておく非を責める文言があったが、私が去ってもさして何も変わらないことをやがて悟ることになるだろう>

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年8月19・26日合併号より抜粋

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