YouTubeチャンネル「木下優樹菜ですっ」から
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 なお、動画で木下さんは「正式な診断を受けた」とは明言していない。また、ブレインクリニックもAERAの取材に対し、木下さんの診断結果は「来院の有無を含めて回答できない」としつつ、発達障害について「脳波検査のみで診断したり、『グレーゾーン』などと伝えたりすることはなく、問診・知能検査・生活状況のヒアリングなどを複合的に行っている」としており、木下さんが脳波以外の適切な診断を受けている可能性もある。ただ、木下さんの動画を見た人の多くが「脳波で発達障害が診断できる」と誤認するのも無理からぬことだろう。

 また、クリニックのホームページにはQEEGによって「ADHD特性、アスペルガー特性、学習障害特性、不安特性、うつ特性などを診断することが出来ます」と明記されている。

 さらに、問題が大きいのは検査後の「治療」だ。木下さんが訪れたというブレインクリニックでは、発達障害の治療としてrTMS治療(経頭蓋磁気刺激)を提唱している。rTMSとは、特殊なコイルを用いて大脳の特定の部位の神経細胞を繰り返し刺激する治療法のことだ。ブレインクリニックのホームページには、こうある。

<当院の特徴は、大規模標準データベースと比較し、客観的データで診断するQEEG検査と最先端の治療であるTMS治療を導入している点です。>

 柏医師はこう解説する。

「rTMSは現在、難治性のうつ病でのみ保険適応されている治療法で、発達障害の症状が改善されるというエビデンスはありません。にもかかわらず、高額な自由診療としてこれを勧めるクリニックが存在するんです。私の病院にも、『他院でrTMSを受けたがよくならない』『rTMSをすすめられ、高すぎるから断ったらほかにやることがないと言われた』といった患者さんが来院します」

 2020年には、日本精神神経学会がrTMS治療について「発達障害圏の疾患(自閉症、ADHD、アスペルガー障害など)やそれに関連する症状、あるいは不安解消や集中力や記憶力の増進などに対する効果は、海外においても確認されていません」との注意喚起を出している。

 発達障害と診断されたり、自身もそうかもしれないと悩んだりする人は少なくない。柏医師はこう続ける。

「日本の健康保険は非常に優れたシステムで、適切だと認められた治療は保険適応されています。脳波を使った検査やrTMSによる発達障害治療は研究こそ進んでいますが、今の段階ではがんの民間療法のようなものと捉えていい。夢物語に踊らされず、適切な診断と治療を受けてほしいと願っています」

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ブレインクリニックの回答