実際、歴史を紐解くと、富士山も巨大地震は同時期に起きている。
864年の大噴火の後には、869年に東北で貞観地震(M8・3)、878年に関東で相模・武蔵地震(M7・4)、887年(M8・0~8・5)に西日本を中心に広い範囲で仁和地震が相次いで起きている。貞観地震は東日本大震災と似た地震、相模・武蔵地震は南関東の大地震、仁和地震は南海トラフ沿いで起った巨大地震と推定されている。
同じように1707年の大噴火の際には、49日前に南海トラフ沿いで宝永地震(M8・6)が起きている。4年前の1703年にも元禄地震(M7・9~8・2)が起きている。それぞれ南海トラフ大地震、関東大震災と似た地震だったと見られている。
こうした歴史を踏まえ、長尾客員教授はこう指摘する。
「政府は今後30年以内に70~80%の確率で南海トラフ巨大地震が起きるとしていますが、連動して富士山も噴火する可能性が高いとみています」
実は富士山の噴火の危機は2度訪れている。1回目は2000年だ。00年には有珠山と三宅島が噴火し、富士山の直下でも火山性地震が増加。半年ほど活発な状況が続いたが、専門家の間ではいつ噴火してもおかしくない状況だった。
2回目は2011年3月11日に起きた東日本大震災直後だ。4日後の3月15日に富士宮市(静岡県)で震度6強の地震が発生した。これは富士山の直下での地震で、多くの火山学者が富士山噴火を覚悟したようだ。長尾客員教授はこういう。
「富士山は300年間噴火しておらず、パワーを溜めている状態です。富士山の噴火のシナリオはドラマの中だけにとどまりません。近い将来噴火するというのは、火山学者100人中100人が同意するところです」
いつ噴火してもおかしくない状況ならば、その前兆を知りたいところ。いきなりドカンといくわけではないという。『富士山噴火と南海トラフ』の著書がある京都大名誉教授の鎌田浩毅氏は「噴火の数週間から1カ月前に必ず前兆がある」と話す。