「謎の千円札」投函が記された大阪府警の落とし物公開情報(HPより)
「謎の千円札」投函が記された大阪府警の落とし物公開情報(HPより)

  ポストに入っていた現金を使ってしまった場合、何らかの罪に問われるのか?元東京地検特捜部の検事、落合洋司弁護士はこう解説する。

「この事案の場合、自宅の前に落ちていた、道で拾ったという訳でなく、ポストに入っていたというところが一番のポイントです」

 一般的に落とし物を勝手に使った場合、刑法第254条の遺失物等横領罪、もしくは刑法235条の窃盗罪に問われる。

「自宅の前に落ちていたなら、遺失物、落とし物になります。それを使ってしまうと、遺失物横領罪などに問われる。しかし、ポストに入っていたとなれば、遺失物にはならない可能性が高い。ポストの主が『誰かがくれたんだ、ありがたい』と解釈して使ってしまっても警察は事件化できないと思います。警察もよほど合理的な理由、犯罪性がない限り、捜査に乗り出せないでしょう。また、ポストに入っていたなら必ずしも警察に届ける義務もないと考えられますね。ただ、使った場合、個人所得になり、納税も必要になるかもしれない」(落合弁護士)

 匿名の寄付が役所に届けられたり、「タイガーマスク」を名乗る人物が児童施設にランドセルを置いて立ち去ったなどとニュースになることも珍しくない。落合弁護士はこう続ける。

「タイガーマスクが置いて行ったランドセルが遺失物になるのかといえば、そんなことは聞いたことがありません。プレゼントされた施設は感謝して、使っているはずです。認知症の方が、勝手に配ったという話もあるそうですが、もしそれがハッキリした場合、民法の贈与の取り消しという手続きが必要になる。認知症の方が何か月も前に配ったことを立証するのは、とても難しい」

 大阪でこのニュースが昨年12月末に報じられた後も、「謎のプレゼント」は続いているという。前出のAさんはこう言う。

「こういうことが続くと毎日、来てないかとドキドキしながら、ポストを見ています。まあ、このまま所有者が名乗り出ないと一定期間で、現金は自分のものになるらしいと聞きましたので、それまで待つしかないと思います」

 謎のプレゼントに困惑する人、使ってしまう人、楽しみに待つ人…。それぞれが年末年始、この騒動に振り回された格好だ。

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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