「そもそも大きいマグロがおいしいとは限らない。スジが硬かったり、脂がありすぎたりすることも。皮に近い部分が中トロなので、大きいマグロは皮と骨の距離があるので、中トロより赤身が多く、かえってよろしくないと思います。それに対して、大トロは厚みがある大きいマグロのほうがおいしい。私としては30キロ前後の小さいマグロの方がおいしいと思っています」
前出の表参道の回転寿司店を経営するオノデラフードサービスの長尾社長に価格についてたずねたところ、「そこはタイミングですので、御祝儀価格としてはいい価格で落とせたのではないかと思っています。コロナ禍で外食産業に元気がない。こういった縁起物で世の中が活気づけばいいと思っています」
落札から5時間後、一番マグロは表参道の回転寿司店に運び込まれた。211キロもある大きなマグロは、5~6人でやっと持ち上げられ、店内へ。
そして、「解体ショー」が始まった。
司会者が「うちの社長は(一番マグロが)ダイナマイトボディだとおっしゃっていた」とアナウンスし、盛り上げる。
報道陣が見守る中、前出の山口社長は「背びれは硬いから、先に落とさないと切れない」と言い、まず背びれに包丁を入れていた。
大きく口を開けたマグロを解体しながら、「このマグロは先月30日に捕れたものだけど、鮮度がすごくいい」と語った。
「6日前に捕れたマグロなので、いろんなリスクがある中で買わなければいけなかった。開いてみなければわからない部分もあるからね。包丁を入れたら水気がなく、思っていた以上によくて、驚きましたね」(山口社長)
6日前のマグロでもおいしいと、都内で海鮮料理店を経営する店主も話す。
「マグロはむしろ、捕ってすぐよりも、数日寝かせるとアミノ酸やイノシン酸のうまみ成分が出て、おいしくなる。捕ったばかりだと、死後硬直があっておいしくないですよ。低温で保存すれば、さらに1週間から10日くらいおいしいですよ」