狙いはズバリと当たった。やま幸とオノデラグループが共同で、青森・大間産のクロマグロ(211キロ)を最高値の1688万円で落札。2番目は大間産のマグロ(173キロ)を1038万円で落札したすしざんまいの木村社長だった。
山口社長は、すしざんまいの木村社長の入札したマグロは「あまり興味なかった。むしろ、3番目の価格で落札されたマグロは美味しいだろうと思った」とライバルを牽制した。
オノデラグループが一番マグロを落札するのは2年連続3回目(2018年、21年、22年)。やま幸の山口社長によれば、同グループ代表の小野寺裕司氏から依頼されたという。
「競りの前日、小野寺さんと話をした時、『私の読みでは2000万円くらいでかたが付くのではないか』と予想しました。事前情報はいろいろ飛び交っていて、ライバルがみえないし、もらった予算の中で買えるのか、という不安もよぎりました。だけど、終ってみれば、私の読みより300万円くらい安く買えて、ホッとしましたよ。2番のマグロを買ったら全然意味がないし、ダメな仕事になるんでね」
なぜ、2番目に高いマグロではダメなのか。
「2番目だったら、メディアに取り上げられない。初競りの落札価格は材料費というより、宣伝広告費なんですよ。宣伝効果がなかったら,誰もやらないと思います」
オノデラグループは、一番マグロを銀座の高級寿司店で提供するほか、表参道に昨年10月オープンした回転寿司店でも提供するという。さっそく、表参道の「廻転鮨 銀座おのでら本店」へ行ってみると、すでに、おおぜいの報道陣が集まり、食べに来た客とで混雑していた。
「もし、2番目だったら、メディアの方が集まらなかったと思うんですよ」と同グループの広報担当者。客の列の中には競合回転ずし店のスタッフもいた。ニュースで見て、“偵察”に来たのだという。確かに宣伝効果は抜群のようだ。
1本のマグロがそんなに高額なのは採算に合うのか。豊洲市場から仕入れている海鮮料理店の経営者に聞くと、
「普通はそんな価格で取引しないですよ。そんなに高かったら、原価割れになってしまいますよ」
と実態を話す。そして、こう続ける。