優れた素質を持つワリエワだが、加えて地道に努力を積んでいることもうかがえる。昨季から継続するフリー『ボレロ』については、昨年9月に行われたロシア・テストスケートでは冒頭の4回転サルコウで転倒、1本目の4回転トウループでは着氷が乱れ、2本目の4回転トウループでは転倒している。また、昨年10月に行われた今季グランプリシリーズ初戦・スケートカナダのフリーではトリプルアクセルの着氷でステップアウトしており、さすがのワリエワも4回転2種類3本に加えトリプルアクセルも組み込む高難度構成を最初から完璧に滑っていたわけではないことが分かる。

 しかし、昨年12月のロシア選手権では、すべてのジャンプをゆるぎない安定感で決めてきた。その過程からは、確実さに欠ける要素が残っていることを自分に許さず、徹底的に習得しようとするワリエワの姿勢が透けて見えるようだ。ワリエワには、天賦の才だけではなく“努力する才能”もあるように思われる。

 15歳にして、既に完璧なスケーターであるワリエワ。何が起こるか分からないのが五輪だが、現在女子シングルの金メダルに一番近いところにいるのがワリエワであることは間違いない。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

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