
ジェンダー問題や生き方の多様性については、表現者としても個人としても、日々意識をアップデートさせていると話す。
「僕自身も自分の価値観を人に押しつけてしまう時期もありました。例えば、若い時は『生まれてきたからには夢を持つべし!』と思って生きていたので、人にも『夢を持て、好きなことを持て』と押しつけてしまうこともあった。でも、それが誰もが目指すべき唯一の幸せではないと気づいたんです。それを踏まえたうえで人にどういう言葉をかけるべきかを考えるようになりました。また、同じ映画監督である妻に子育てを任せきりにしてしまっていた時期もありました。その時は心のどこかで『男は働くもの』という古い価値観が残っていたのかもしれません」
■映画作りは漫画の延長
繊細な配慮をしつつも萎縮することなく映画を撮り続ける、とキッパリ。創作への意欲は中学時代から変わらない。
「映画に主人公が実家で学生時代に描いた『漫画ノート』を見つけるシーンがありますが、あれは僕が実際に学生時代に描いたものです。漫画が大好きで、自分でも描きたくて何冊も描いた。映画作りもその延長線上にあると思っています」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2022年1月3日-1月10日合併号