同じ時期に切迫早産で入院していたママたちは、みんな無事に元気な赤ちゃんを出産し、我が家の子どもたちとは成長のスピードが違いました。早産児や障害児は育児雑誌に載っている成長過程にも当てはまらず、長女がこれからどんな風に大きくなり、どんな生活を送ることになるのか全く想像ができず、「うちの子は特殊なんだ」と思うたび、孤独と不安に襲われ、現実から逃げたくなりました。

■親は不安でいっぱい

 それから15年以上経ちましたが、今でも当時の私と同じ悩みを抱えたママたちからの相談は絶えません。周囲に障害のある子どもを育てる家庭を見つけられず、赤ちゃんがどう育つのか不安でいっぱいなのです。

 そこで私が運営しているNPO法人では、当時の私がほしかったと思う場所や情報を中心に、ワークショップやピアサポートの企画をしています。ピアサポートの『ピア』は仲間という意味であり、同じ境遇を乗り越えた先輩ファミリーに相談できるシステムです。

 長女が赤ちゃんのころに不安を聞いてもらえる場所があったら、就園・就学時期に情報交換をして知恵を出し合える仲間がいたら。きょうだい児の次女がもっと早く自分を出せる場所を見つけていたら……。きっと我が家の笑顔が、もう少し増えたのだろうなと思うのです。

■医療・教育・福祉の相談を1カ所で

 昨年4月、小児科医の友人あーちゃんのクリニック内に、『おうち支援部』という家族支援専門の部署を立ち上げました。おうち支援部とは、その名の通り、NICU(新生児集中治療室)を退院したばかりの赤ちゃんや、持病や障害のあるお子さんを育てるパパやママが、少しでも自宅での生活がしやすくなるように一緒に考えていく場所であり、ドクターやソーシャルワーカーの他に、公認心理師や特別支援教育が専門の大学教授の話も聴くことができます。

 患者さんが通院中の大きな病院とも連携し、地域のかかりつけクリニックとしてのフォローはもちろん、就園・就学相談や、利用できる制度やサービスの提案など、「ここに来れば、どんな不安や悩みでもみんなで一緒に考えるよ!」というコンセプトのもと、多職種連携を形にしたチームです。

 医療と教育と福祉に関することを1カ所で相談できるシステムは、日本ではまだ珍しいと思います。このチームが立ち上がったことで、自治体や障害児に関わる事業所との勉強会を開くことができ、ニーズが明らかになったり、地域で理解や協力を得られるようになりました。このつながりも、今の私にはとても大切です。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
突然の「お久しぶりです」