「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
2022年がスタートしました。この2年で社会は大きく変わりました。
■コロナ禍で相談に変化
コロナ禍により、私が運営しているNPO法人に寄せられる相談内容も変化しました。おうち時間が増え、親子が一緒に過ごすことが多くなったせいか、「子どものできないことばかりが目につく」という相談が顕著に増加しています。
我が家の中学生の子どもたちも、昨年は休校やオンライン授業が続き、ともすれば自宅でごろごろしている状況に不安が募る日々でしたが、他のご家庭の話を聴くと「どこも同じなんだなぁ」と、少し安心することができました。
情報交換をする場や相談場所がないと、きっと誰でも孤独を感じます。子どもに障害がある場合はなおさらです。今回はつながりを持つことの大切さについてです。誰にとっても仲間の存在は、大きな力をくれると思うのです。
■余裕ないまま始まる育児
生まれて来た赤ちゃんに病気や障害があるとわかった時、多くのパパやママは、病気に対する知識も気持ちの余裕もないまま育児が始まります。
私もそうでした。泣き止まないだけで具合が悪くなってしまったのだろうかと不安になり、少しの変化も障害と関係があるのではと考えてしまったり、今振り返れば何でもないことにも戸惑っていました。障害児育児の初期は、楽しさよりも心配事の方が圧倒的に多かったように思います。
脳性まひの赤ちゃんは、月齢が進むにつれて少しずつ、ふにゃふにゃだった身体にかたさを感じるようになります。我が家の子どもたちは双子だったため、生後半年頃から、ふたりの成長の差や長女のまひの進行がリアルにわかりました。
すでに次女は首が座り、片手で縦抱きもできましたが、長女は縦抱きにしようとすると手足に力を入れて突っ張りました。そして常に天井の電気をじっと見つめていました。目が合うと笑ってくれる次女と比べると、知的レベルにも差を感じるようになりました。