永明(えいめい)、オス。1992年9月14日、中国生まれ。2歳で来園、2001年にお父さんに。人間で言うと90歳くらいにあたり、現在、飼育下で自然交配して繁殖した世界最高齢のパンダ。おっとり、のんびりとした性格だが、ファミリーで一番のグルメ (撮影/楠本涼)
永明(えいめい)、オス。1992年9月14日、中国生まれ。2歳で来園、2001年にお父さんに。人間で言うと90歳くらいにあたり、現在、飼育下で自然交配して繁殖した世界最高齢のパンダ。おっとり、のんびりとした性格だが、ファミリーで一番のグルメ (撮影/楠本涼)

 いつでも好きなときに、好きな竹が食べられるように、こまめに観察し、新鮮な竹を補充するのだという。ほか、リンゴ、ニンジン、動物用ビスケットも補助食として用意している。

 じつは、アドベンチャーワールドは、中国を除く世界で最もパンダの繁殖に成功している施設でもある。これまでに17頭もの赤ちゃんを世に送り出せた、その理由は「永明(えいめい)と良浜の相性が良い点ですね。特に永明が繁殖時に攻撃的にならず、メスにとても優しいことが大きい」と飼育スタッフは語るが、もちろんそれだけではない。温暖で雨が多く豊かな紀伊半島ゆえに新鮮な竹が豊富に手に入り、健康状態を良好に保つことができるのも一因だ。そしてそれ以上に、長年にわたる繁殖研究で蓄積されたノウハウも重要だ。年に数日しかない交尾の機会を逃さないよう、行動、ホルモン、体の変化などを総括的に判断。出産子育てについては、スタッフも24時間体制でサポートするという。

 パンダを飼育するうえで、独自に心がけていることがあるかも聞いてみた。

「日々の健康管理として、良質な竹の給餌(嗜好性、時期、年齢に合わせたもの)、毎日採食量や糞量は記載して些細なことを見逃さない工夫、健康診断(体重、血液検査、個体によってはそれ以外の項目も)を行っております」。

 ほか、竹を切らさないようパーク内でも育成したり、衛生管理に特に気を配り飼育スペースを「自分が寝られるくらい常にきれいに」保つ努力をしたりしているというから頭が下がる。愛情に裏打ちされた日々のきめこまやかな世話によって、このパンダの楽園は守られているのだと実感させられた。

 1月12日から始まった上野動物園に生まれたシャオシャオとレイレイの一般公開、初回3日間の抽選倍率はなんと348倍。2017年のシャンシャン公開時の抽選倍率は最高144倍だったから、いかにパンダ人気が加熱しているかがわかろうというものだ。

 抽選にはずれて双子パンダに会えない!と嘆いている方は、すこやかに暮らす個性豊かな7頭に会いに、和歌山に足を運んでみてはいかが?

(文・伏見美雪[本誌])

週刊朝日  2022年1月21日号

暮らしとモノ班 for promotion
新型スマホ「Google Pixel 9」はiPhoneからの乗り換えもあり?実機を使って検証