聞けば、和歌山にいる7頭のパンダたちには、それぞれ性格に違いがあるという。例えば楓浜のすぐ上の姉にあたる3歳の彩浜(さいひん)は、「人懐っこく、クンクンと鳴いて甘えることもある」。こうした個性は、いつごろから顕著になるのだろうか。
「歩く、木に登る、といった行動の多様性が表れる、生後5~6カ月くらいから、性格にも個性が出てくる印象を受けます」
楓浜や彩浜のような一人っ子も、桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)のような双子も育ててきた同パークに、性別や子の頭数による性格の違いがあるかも、尋ねてみた。
「すべての個体に当てはまるわけではありませんが、一般的に、オスのほうがメスより母親との接触時間が長いですね」
オスは甘えん坊、メスは自立が早いというイメージは、人間と似ているようだ。
また、一人っ子のほうが、双子よりも、母親と接する時間が長い。2頭の場合はこども同士で遊ぶ時間があることも大きいだろうが、オス2頭の赤ちゃんは母親の取り合いになり、メス2頭の赤ちゃんは互いにあまり干渉しない。オスとメスの双子だと「オスの赤ちゃんがメスの赤ちゃんに絡みにいく」というから、これまた人間味があって興味深い。
いま1歳1カ月。人間でいえば3歳くらいの、かわいいさかりの女の子・楓浜。この日も、お母さんに甘えるようにしがみついたり、運動場に設置された遊具によじのぼったり、仰向けに転がって竹を食べたりと、かわいい“幼児”らしい姿をたくさん見せてくれた。
母乳で育ってきた楓浜が竹を食べるようになったのは、1歳1カ月を迎えた昨年12月下旬あたりから。「楓浜の便に竹が混ざり始めました。乳歯のほとんどが永久歯に生え変わり、竹を食べられるようになってきた成長のしるし。おそらく本格的に竹を食べられるようになるのは1歳2か月くらいになるかと思います」。
ちなみに同パークで大人のパンダにあげている食事は、主に4種類の竹(孟宗竹、女竹、唐竹、四方竹)。「どの竹でも食べてくれるわけではなく、パンダによって好みが違うので、掃除などを行う際、用意した竹をどれくらい食べているのかなど注視して、その日食べていた竹に近いものを与えるようにしています。特に、高齢になってきたお父さんパンダ永明にはたくさんの竹を食べてもらう必要があるので気をつけています」。