【「どんな背中を見せるか」がいまを支えているのかもしれません。】荒川静香(あらかわ・しずか)/1981年生まれ。プロフィギュアスケーター、日本スケート連盟副会長。2006年、トリノ五輪金メダリスト。同年5月にプロに転向、解説やキャスターも務める[撮影/工藤隆太郎、styling
【「どんな背中を見せるか」がいまを支えているのかもしれません。】荒川静香(あらかわ・しずか)/1981年生まれ。プロフィギュアスケーター、日本スケート連盟副会長。2006年、トリノ五輪金メダリスト。同年5月にプロに転向、解説やキャスターも務める[撮影/工藤隆太郎、styling 後藤仁子 costume フリーランス(ストックマン)(荒川さん) hair & make up 須藤鈴加(池谷さん)]

荒川:人に会うことも大切ですよね。コロナ禍で難しいことですが、外に出て背筋を伸ばす瞬間は、健康や生活を支えてくれているなと思います。

池谷:おっしゃる通りです。たとえ運動ができなくても、買い物や散歩に出るとき、おなかを意識的にぐっと凹ませて、背筋を伸ばして歩く。それだけで筋力アップにつながり、その瞬間に見た目も変わります。

 私の専門分野でいうと、若々しくいるには、血管を若く保つことも大切なんです。人間の血管は、桜の樹に似ています。大動脈という太い血管が幹、手足が枝で、血管が行きわたる末端が花の咲く部分。加齢で幹と枝は老いていきますが、生活習慣の改善で樹齢100年の桜に花が咲くように、末端を「ひらく」ことができるんです。

【自分の体の変化に気づくこと。「明日できることは明日」でいいんです。】池谷敏郎(いけたに・としろう)/1962年生まれ。医学博士、池谷医院院長。専門は内科、循環器科。主著に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える
【自分の体の変化に気づくこと。「明日できることは明日」でいいんです。】池谷敏郎(いけたに・としろう)/1962年生まれ。医学博士、池谷医院院長。専門は内科、循環器科。主著に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』『老いは止められる』など[撮影/工藤隆太郎、styling 後藤仁子 costume フリーランス(ストックマン)(荒川さん) hair & make up 須藤鈴加(池谷さん)]

■イナバウアー体操を

荒川:どう改善すればいいんですか?

池谷:動物性油を控えて魚に含まれる「オメガ3」という油をとったり、糖質を控えるなど食生活の改善や運動によって、血管は若返らせることができます。

 運動も有効です。たとえば、イナバウアー体操はどうでしょう。体を縮めて力を入れて20秒ほど収縮させ、一気に体をひらき、血流を開放する運動です。できるなら、さらに体を反らせてもOKです。

 再開した血流が血管の内側の壁を刺激し、NO(一酸化窒素)という血管拡張作用を持つ物質が出ます。これが全身を流れ、血管がしなやかに広がる。血管の内側が老化で傷つくと動脈硬化の原因にもなるのですが、NOにはそれを防ぐ効果もあります。毎日3回ほど繰り返せば、見た目も含めて若返り効果が期待できますよ。

荒川:血管年齢を意識したのは初めてです。ぜひ試してみます。

私には週に5日のスケートがあって、その習慣をバロメーターに体の変化を把握しやすいんです。ただ、この先もしもスケートから離れたとき、何をバロメーターにするか。スケートが健康への「最後の命綱」みたいな面もあるので、そこをどう見直すか。今日はたくさんの気づきが得られました。

池谷:荒川さんはトップアスリートですが、見られる意識や簡単な体操なら、誰でも挑戦できます。私の患者さんは若々しい人が多いんです。ぜひ、考える機会にしてみてください。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年1月17日号