もはやGIIに格下げ!?
そう競馬ファンの間でささやかれる菊花賞のレベル低下問題。三冠レースの掉尾(ちょうび)を飾る重要な一戦だが、3000mという長距離が敬遠され、近年は有力馬の出走回避が相次ぐ。寂しい状況だが、レジェンドアナウンサーの杉本清さん(85)は、菊花賞の重みと夏の上がり馬への期待を語る。
杉本さんは数々の名実況で知られる元関西テレビのアナウンサー。菊花賞に限っても、「大地が弾んでミスターシービーだ」(1983年)、「菊の季節に桜が満開」(87年。サクラスターオー)、「弟は大丈夫だ。弟は大丈夫だ。弟は大丈夫だ」(94年。ナリタブライアン)といった名言を残し、ファンの心をわしづかみにしてきた。
「ダービーの実況も、と頼まれましたが、(関東の)フジテレビのアナウンサーを差し置いて、と遠慮しました。それに、関西には菊花賞があるという気持ちもありましたから」。94年の定年退職後もフリーの立場で実況を担当してきた。
「少しずつ後輩に任せるようにしていったんですが、宝塚記念の実況は誰もやりたがらなかったし(笑)、菊花賞だけは絶対に譲らないという気持ちでした」
杉本さんにとってそれだけ思い入れの強いビッグレースだが、最近は春に活躍した実績馬の回避が目につく。
昨年はダービー1、2着馬がともに出馬せず、それぞれジャパンカップ(2400m)、天皇賞秋(2000m)に出走した。今年の菊花賞は10月23日に阪神競馬場で行われるが、ダービー馬ドウデュースはフランスの凱旋門賞(2400m)に挑戦、皐月賞馬ジオグリフは天皇賞(秋)の出走を選択した。
「世界の競馬の流れからいっても、中距離が重視されてきています」と前置きしつつも、菊花賞が重要な理由を挙げる。
「世界の傾向はそうだけど、逆にそうだからこそ、日本では3000mのGIを三冠の締めとして残すのが大事なんです。2400mで強い馬が3000mでも強いかと言うと、これは走ってみないと分からない。でも3000mで強い競馬ができる馬は、2400mでも強いですよ。菊花賞馬にフロックなし。僕の持論です。菊花賞を勝つことで一皮むけて大きく成長する馬もいます」