官邸関係者は、こう嘆く。

「欧米だけではなく、アジア各国と比べても圧倒的に遅れている。1月末時点で183万人というのは、菅政権で1日に打っていた接種数170万人とほぼ同じ程度でしかない。これはワクチンを確保できず、全国に配分できないのが大きな要因です。17日に行われる首相の施政方針演説の原稿には、現時点では『強力な変異株が現れるのを想定し、万全な体制を整えるべく取り組んできた』などと自画自賛のフレーズが並んでおり、危機感のかけらもない内容になっていました……」

“やっている感”はある岸田首相のオミクロン対策だが、専門家からも注文をつける声が上がっている。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は10日に岸田首相と面会し、「特に高齢者のワクチンの追加接種を、国の最優先課題として推進してほしいと申し上げた」と発言していた。

 この発言に対して順天堂大の堀賢教授(感染制御学)は、こう補足する。

「18歳以上が対象となる大規模接種センターの開設や、職域接種の前倒しなどの方針を示していますが、いま戦略的に重点的に取り組むべきは高齢者や基礎疾患を持った人への接種であるのは、専門家の共通した考えです。オミクロンは重症化率が低いとはいえ、感染者が爆発すれば病床はひっ迫し、助かる命も助けられなくなる。重症化リスクの低い人たちへワクチンが流れることで、高齢者の重症者への配分が不足して接種が遅延することになりかねません。国民の評判を気にするあまり、施策がポピュリスティックになっている印象がある。科学者の意見も積極的に聞いてほしい」

■「ただの風邪」の楽観論に警鐘

 オミクロンは重症化しないと言われており、そのため「ただの風邪と同じ」という楽観論も出てきている。そんな中、専門家からは新たに懸念を指摘する声が出てきている。それは、オミクロンの初期症状の変化だ。

 スマホアプリなどでイギリスの感染状況を分析している「ゾエCOVIDシンプトム・スタディー」が今月6日にオミクロンの症状についてデータを公表した。それによると上位5つの症状は鼻水が73%、頭痛が68%、疲労感64%、くしゃみと喉の痛みが60%となっている。さらに下位を見ていくと「ブレイン・フォグ」を訴える人が24%にもなっており、ここに注目が集まっている。

 ブレイン・フォグとは、英語で「脳の霧」という意味。その名の通り、頭に霧がかかったような症状などが出る。認知機能障害の一つと考えられており、記憶障害、知的明晰さの欠如、集中力不足、精神的疲労、不安なども症状に含まれる。今までできていたことができなくなり、仕事に復帰できない人も出るといわれる。

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症状「ブレイン・フォグ」の実態