血管の中で最も細い毛細血管には、重要な機能がある。毛細血管スコープで見ると、正常な毛細血管は画像で形がはっきり映るが、加齢や高血糖などで毛細血管が劣化したゴースト血管は不明瞭だ(写真:あっと株式会社血管美人提供)
血管の中で最も細い毛細血管には、重要な機能がある。毛細血管スコープで見ると、正常な毛細血管は画像で形がはっきり映るが、加齢や高血糖などで毛細血管が劣化したゴースト血管は不明瞭だ(写真:あっと株式会社血管美人提供)
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 ツヤツヤの肌は、若々しさの指標のひとつだ。年を重ねれば個人差が 大きくなってくるが、見た目年齢と毛細血管の年齢は比例するという。AERA 2022年1月17日号から。

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 知人に、「どう見ても30代」の女性がいる。実年齢は55歳。塗っているのは日焼け止めだけなのに肌はツヤツヤでシミやシワはなく、髪の毛はボリューミー。夏は毎年ビキニ。それがまたサマになっている。

 いわゆる「美魔女」というやつか。若さの秘訣を聞くと、「食事と運動には気をつけているかな」。たんぱく質源となる鶏胸肉、納豆、木綿豆腐、卵は毎日欠かさず、野菜、きのこ類、海藻類、そして発酵食品たっぷりの食事を心掛けているという。糖質は毎食取るが、量はほどほど。白米より玄米派。好きなワインは週末にだけ、ゆっくり楽しむ。週3回ヨガに通い、よほどのことがない限り23時までにはベッドに入る。

 20歳の若見えも納得の健康的な生活だが、隣に立つのは少し嫌だ。この差は一体何なのか。

■見た目と毛細血管年齢

「毛細血管の状態と関係しているかもしれません」と指摘するのは、大阪大学微生物病研究所環境応答研究部門情報伝達分野の高倉伸幸教授だ。大手化粧品会社と皮膚と毛細血管の関連について共同研究を行い、マイクロスコープで接写した肌の状態と、毛細血管の状態はほぼ比例するという実例を多く見てきた。

「見た目年齢と血管年齢の相関を調べた研究結果もあります」

 愛媛大学・伊賀瀬道也教授が行った研究で、同大医学部附属病院抗加齢・予防医療センターで抗加齢ドックを受診した住民273人の写真データから、60歳以上の人に接する機会の多い大学病院老年病専門病棟の女性看護師20人が見た目年齢を評価し、抗加齢ドックでの頸動脈エコーの検査結果との関連を検討した。見た目年齢が高い群は、見た目年齢が低い群と比較して、女性で平均5歳、男性で8歳、血管年齢が高かった。

「動脈の硬さなどを基準にする血管年齢と、見た目や臓器の若さとは密接な関係があることは複数の研究で実証されています。さらに近年注目されているのが毛細血管と若さの関係です」

 血液を心臓から全身の各組織に送り出す動脈に対し、毛細血管は、動脈と、全身の各組織から血液を心臓に戻す静脈との間をつなぐ網目状につながる細い血管で、全身の血管の総長の9割を占める。

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