肺年齢の老化は、酸素化(酸素が血液に取り込まれること)が悪くなることを意味する。働き盛りにとって、肺年齢は仕事のパフォーマンス低下に直結すると今井医師は言う。
「加齢で壊れた肺組織は元には戻りません。でも、呼吸筋を強く維持して減りを抑え、肺活量などの機能を高めることで肺年齢を若返らせることは可能です。40代、50代を過ぎ、日々の運動量が落ちて疲れやすくなった、呼吸が浅くなったと感じる人は、ぜひ意識してみてください」
若々しい体づくりには、「骨」も大きく関わっている。川崎医科大学特任教授の太田博明さんによると、そのカギとなるのが骨の細胞から分泌される「オステオカルシン」という骨ホルモンだという。
「オステオカルシンは血液に乗って脳に運ばれ、海馬に働きかけて記憶力を高め、筋力を増強し、最終的に身体全体の代謝の恒常性を維持します。『テストステロン』という男性ホルモンを増加させ精力をアップさせる力も、免疫力を担う白血球のもとになる造血幹細胞の機能を保ち、免疫細胞を増やす効果もある。まさに最高の若返り物質といえます」
骨の新陳代謝を促す
もう一つ、老化に大きく関係する骨の要因が「骨密度」だ。骨密度は、「見た目の老化」にも深く関係するという。
「骨の強度が低下すると、連結している背骨がつぶれるので、背中が丸くなったり、体形が崩れてきます。特に女性の顔面骨は若い時に比べて縮小し、顔も老けて見えやすくなります」
骨密度の低下で下顎骨が小さくなり、周りの筋肉や皮膚が余ってほうれい線ができやすくなる。骨が小さくなると、眼窩(がんか)も広がり、目の下のたるみや、目じりや口まわりの小じわも生じやすくなるという。
では、骨を強く保つには、どうすればいいのか。「骨は何歳からでも若返らせることができる」と太田さんは太鼓判を押す。
「骨は一生、新陳代謝を繰り返しています。『骨芽細胞』という骨を作る役割の細胞に、司令塔である骨細胞が骨づくりを促し、リモデリング(再構築)を行う。1カ月ほどで古い骨を壊し、5カ月ほどかけて新しい骨ができる。全身の骨が入れ替わるのに、5年ほど要します。私たちの体の中に、5年前の骨はもうないんです」