イベントの冒頭では大久保さんに、三男と暮らした日々についてお話しいただきました。「すごく楽しかった」と笑顔で話す一方、うまくいくことだけではなかった、と振り返ります。

「初日の朝、よっしゃ!とインスタントのみそ汁を作ったら、ふたを開けた息子に『何このお湯』と言われて」

 なんと、みそを入れ忘れていたんだそうです。実は大久保さん、自宅ではリモコン一つ自分で取りに行かず、子どもたちに「取って」と頼むほど何もしないパパ。家事は初挑戦だったんです。

 一番大変だった経験を聞くと、「連絡帳を見るのが怖かったですね」。連絡帳?なぜ怖いんでしょうか。

「怒られている感じがして。夕方ぐらいに確認して足りないものがあれば、買いに行かなきゃいけないわけですよ」

 あんな激しい試合をこなす大久保さんが連絡帳でドキドキするなんて。私も田中さんも、一気に緊張がほぐれました。

 参加者の質問で目立ったのは、家事育児での夫婦の行き違いに関するものでした。

■ 思考を知って接し方を変える

 ある女性からの相談は、「夫が子どもの行事や出産予定日に休暇を取るべきか、と聞いてくるんです」。夫は子育てに興味がない、と言うのですが、私の見る限り、多くの妻は夫に考えていることをはっきり伝えず、「察してほしい」と不満をためがちです。

「(はっきり)言われたらビクッとしますからね。やろうと思うし、楽しかったと思えば、徐々に興味が湧くかもしれない」

 と大久保さん。田中さんからは、

「男性は競争、女性は協調性を重んじて生きてきた側面がある。男性には“察すること”が難しい可能性があることは、頭に入れておいていい」
 というご指摘をいただきました。思考を知れば、接し方を変えることができます。貴重な指摘だと思いました。

 男性からの「単身赴任で家庭に関われない。たまにやると怒られる」という相談には、田中さんから、

「家事をやるけどクオリティーが低くていいか、それとも介入しないほうがいいか、もっと話しあうべきです」

 とアドバイス。さらに、この問題にはサッカーが参考になるのでは、と田中先生。「試合中は細かい指示が出せないのに連携している。どうしてできるんですか?」と大久保さんに尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「日々重ねてきた練習じゃないですかね。チームによって狙いや決まり事があって、その練習をする。家事も一緒にやることで妻の考えが分かると思う」

 チームプレーは練習ありき。田中先生も「家事って本番の話ばかりされるけど、準備も大事」と続けました。

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試合前に洗濯物をたたむと「整った」