「家事がうまくできない」という男性の相談には、
「やっぱりやることですね。みそ汁もそうですけど、一回ミスしたことで次からみそ入れますから。最初から成功を求めたらダメ。できない前提でやっていく。するとできた時の自信のつき方がすごい……かもしれない!」(大久保さん)
妻も夫も本番の勝負にこだわらず、「練習」を重視する必要がありそうです。
育児を手伝いたがらない夫の主体性のなさに悩む女性にも、大久保さんの経験がヒントになると言う田中先生。
「やらざるを得ない環境だったからできた。やれば自分でもできたから、誰でもできると思った、という大久保さんの言葉には賛同します」
田中さんは、育児ができなくて深く絶望する経験をしてはじめて、「強く役に立ちたい」と思ったと言います。「一回(妻が)家出したらいい」と冗談めかして、夫と0歳児を二人きりすることを提案。育児で絶望する体験を、ぜひ一度してみてほしい、と訴えました。
■「好きで得意な家事」を見つけた
興味深かったのは「仕事と家事」の関係です。大久保さんが1年間の三男との2人暮らしの間に見つけた、「好きで得意な家事」は洗濯物をたたむこと。
「試合前に洗濯物を畳む。そうするとすごく整うんですよ」
洗濯物をたたむと、サウナにでも入ったかのように気持ちよく試合に行けた、という経験をお話しいただきました。
「在宅勤務で仕事の自分と家庭の自分が切り替えられない」
という悩みには、
「僕の場合、サッカーの時は怒っているイメージがありますけど、ホイッスルが鳴った瞬間にもう何も思わないんですよ」(大久保さん)
仕事も家事もゾーンに入って集中する。心でホイッスルを鳴らして切り替える。大久保さん流のこの手法も、まねしてみてください。
最後に、大久保さんはこんな話をしてくれました。
「今回、自分が今までやってきていないこと(家事)に初めてチャレンジしてできた。そうすると、他のこともできるんじゃないかというモチベーションになっている。いろいろなこと、その時できることにチャレンジしたいなと思っています」
家事・育児を1人でやった経験が、引退後の人生の自信になったという言葉は、家事・育児に対する見方を変えていくものだと思います。サッカーも家事も、失敗を恐れず行動することが大切。今後もこうした発信を続けてほしい、と強く思いました。
◯西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・夫婦間のコミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト®」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。ラジオ大阪「西崎彩智の家庭力アッププロジェクト」(第1・3土曜日夕方)が2021年5月1日からスタート。フジテレビ「ノンストップ」などのメディアにも出演
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