「山奥の過酷な環境で生き抜く意志の強さを感じます。今、コロナ禍もあり不安定な世の中で、安らぎやよりどころが求められる風潮がありますが、寛容さと強さという二つの印象を併せ持つパンダはその受け皿となり得るのかもしれません」
キャラクターデザイナーの視点からパンダの魅力を語るのは、1995年の誕生以来愛され続けるキャラクター「たれぱんだ」の生みの親である、末政ひかるさんだ。
「抱っこしやすいクマのフォルムは、長年ぬいぐるみとして親しまれてきました。そのなじみ深い形態に白黒というとっぴな色が組み合わさると、デザインとしてとてもキャッチーですよね」
今はこう分析する末政さんだが、体中のパーツがだらりと垂れた「ゆるさ」で爆発的な人気を呼んだ、たれぱんだを思いついた理由はよく覚えていないという。
「文具会社に入社したての駆け出しデザイナーで、とにかく忙しかったんです。パンダのキャラクターを考えるよう指示されたのですが、疲れ果てた自分の姿が投影されたのかもしれません(笑)」
「生きているのか死んでいるのかわからない」「目が気持ち悪い」などと営業サイドの評価は散々だったが、可能性に懸けて商品化してみると市場ではウケた。
「しゃれとして楽しめるシュールさと白黒のシンプルな色味が奏功して、キャラものに縁遠いおじさんたちにも人気が出ました。当時の小渕恵三首相に似ていたことでも話題でしたね」と、末政さんは振り返る。
白黒の体色に、ずんぐりとした体形、丸い顔。パンダがこれらの「かわいらしさの要因」ともいえる特徴を手に入れた理由は何なのだろうか? 『ざんねんないきもの事典』シリーズを監修した動物学者の今泉忠明さんに解説してもらった。
まず、白黒模様には「分断色」の効果がある。
「雪や茂みの中にいると、模様に応じて体のパーツがバラバラに動いているように見える。結果、体全体の輪郭がわかりづらくなり、迷彩効果を発揮するのです」