(撮影/楠本涼)
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 パンダの印象を聞けば、大半の人は「かわいい」と答えるのではなかろうか。ネット上のパンダ動画には悶絶(もんぜつ)する人たちのコメントがあふれ、CMや菓子のパッケージなどにもパンダキャラが溶け込む。パンダのかわいさの正体について、さまざまな専門家に分析してもらった。

【写真】パンダの目の周りの模様をとると…

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 そもそも、「かわいい」とは何なのか。

 実験心理学の観点から10年以上このテーマを研究し続ける、大阪大学大学院の入戸野(にっとの)宏教授は、代表的な「かわいい」の条件を三つ挙げる。

「笑顔、やわらかい色合い、そしてパンダが該当するベビースキーマです」

 ベビースキーマとは、人間や動物の赤ちゃんに特有の性質のこと。手足が短い、体や顔が丸々としている、頭や目が大きい、おでこが広いなどの特徴は、私たちの「守ってあげたい!」という気持ちを刺激し、「かわいい」と感じさせるという。

 見た目だけでなく、手足の短さゆえのぎこちない動きもベビースキーマにあたる。たしかにパンダの動く姿というと、バランスを崩して尻もちをついたり、木からぼてっと落ちたりと、どこか危なっかしい絵が思い浮かぶ。パンダのかわいさは、赤ちゃんっぽさとも言い換えられるようだ。

 顔をもとに性格や人間性を分析する相貌(そうぼう)心理学の第一人者、佐藤ブゾン貴子さんは、パンダの顔について「まさに人が心地よさを感じる特徴が凝縮された顔。人気が出ないわけがない」と太鼓判を押す。

「顔の輪郭、耳、目、目の周りの黒いふち、鼻、すべてが丸でできている。曲線は、穏やかさや柔軟性を意味します。キティちゃんやアンパンマンなど、多くの人気キャラクターに共通する特徴です」

 さらに、ドングリのような丸い瞳は好奇心を、黒ぶちで形作られた垂れ目は包容力を表し、見る者に「私のことを受け入れてくれそう」という印象を与えるという。

 いっぽうで、パンダの目には「強さ」を感じさせる部分も。ふち模様の影響で垂れ目の印象が強いが、実は目尻自体は上がっているのだ。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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