共和党は昨年、トランプ氏への批判を強めるリズ・チェイニー氏を党ナンバー3のポストから解任し、影響力を弱めようとしている(photo gettyimages)
共和党は昨年、トランプ氏への批判を強めるリズ・チェイニー氏を党ナンバー3のポストから解任し、影響力を弱めようとしている(photo gettyimages)

 一方、息子のジョージ・W・ブッシュ元大統領政権で副大統領だったディック・チェイニー氏の娘リズ・チェイニー下院議員(西部ワイオミング州選出)は昨年末、1.6議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会で衝撃的な事実を公表し、注目を浴びた。共和党員の多くがトランプ支持に徹しているのに対し、彼女はトランプ氏批判の急先鋒(きゅうせんぽう)だ。

 彼女は、トランプ氏のマーク・メドウズ大統領首席補佐官(当時)のショートメッセージなどの通信内容を入手していた。それによると、襲撃された議事堂内にいた議員らからメドウズ氏に対し「トランプ氏に今すぐ襲撃をやめさせるようにテレビ出演をさせるべきだ」といったメッセージが殺到していた。発信者の中には、トランプ氏の長男トランプ・ジュニア氏も含まれていた。

 中間選挙の焦点は連邦議会で、上院議員の3分の1に当たる34議席と下院の全435議席が改選となるが、民主党と共和党でどんな議席配分となるかだろう。

 現在、与党民主党は上院でゼロ、下院でわずか10議席のリードしかない。「トランプのお墨付き」を求め、勢いづく共和党が下院の過半数を奪回する可能性も高いとみられている。

■コロナで混乱の米社会

 さらにバイデン政権にとっては、逆風も強い。新型コロナウイルスの新変異株オミクロンの猛威で、米社会は混乱状態が続く。

 航空便は、罹患した従業員が多いせいで欠航が相次ぐ。長く続くサプライチェーンの混乱に加え、小売業の従業員が感染し、スーパーマーケットの棚は埋まっていない。学校の授業は対面で再開したかと思えば、すぐにオンライン授業に逆戻りを繰り返している。

 1.6議事堂襲撃事件で、米国の民主主義は深く傷ついた。その上、中間選挙で再度混乱があれば、民主主義の後退だけにすまない傷をも抱えそうだ。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2022年1月24日号