佐藤:でも、インドなんかでは2桁×2桁まで覚えさせているし、九九を覚えることが後々になって数学的な想像力を邪魔するかと言ったら、そんなことはないと思うんですよ。
柳沢:九九についてだけいえば私もそう思います。ただ、算数・数学嫌いというものがこれほど明確に日本の子どもたちの意識の中にあることは、しっかり考えないといけない。アメリカ人にはほとんどいないですから。
■入学試験の問題の傾向
──日本の子どもの算数・数学嫌いの原因は何でしょうか?
柳沢:日本の場合、学校で教えるものを何によって決めているかというと、入学試験の問題の傾向なんです。形式的には学習指導要領に基づいて決められていますけど、実態はそうではない。一時期、入試問題に難問奇問がよく出題されましたけど、ああいうものも含めて「入試問題の傾向がこうだから、それに合わせて勉強しましょう」というのが日本の教育なんです。いわば本音と建前みたいな部分で子どもたちがアップアップしているところはあると思います。
佐藤:だから私は文部科学省にもっとしっかりしてほしいと思います。環境問題など未来のことをみんなで考えていかなきゃいけないのに、いつまでも教育が変わらないのはおかしいです。
──21年度から早稲田大学政治経済学部の一般選抜で数学(数学I・数学A)が必須化されたことが大きな話題となりました。
佐藤:すごくいいことだなと思います。これからの時代は文系でも情報処理能力が必要だし、表やグラフを見て分析する力も大事。そうやって入試の段階で「うちの大学はこういう学生がほしいんだ。こんな人材を育てるんだ」というビジョンを示してくれれば、それに向けて子どもたちも頑張ります。そして大学に入ったら文系・理系に関係なく、融合した知識を身につけて視野を広げてほしい。
柳沢:私もこれからの時代は理系も文系もともに重要だと思います。例えば電気自動車にしても技術が高いだけではダメで、さまざまな交渉を重ねながら国際規格にのせないといけない。「失われた30年」と呼ばれる経済の低迷から回復するためには、理系嫌いを作らない教育の形が求められると思います。
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(構成/編集部・藤井直樹)
※AERA 2022年1月24日号より抜粋