「念の為、インフルエンザかどうか確認したい」とおっしゃったので、インフルエンザ抗原検査を行ったところ、1分もたたないうちに、コロナ陽性と判明。幸か不幸か、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスを同時に判定する抗原迅速診断キットを採用していたため、Covid-19であることが判明してしまったという事例でした。

感染者が急拡大する中、重症も軽症も同じ対応では病床はひっ迫してしまう(写真はイメージ/GettyImages)
感染者が急拡大する中、重症も軽症も同じ対応では病床はひっ迫してしまう(写真はイメージ/GettyImages)

 インフルエンザと言うよりは、コロナ陽性になる可能性が高いと考え、コロナの検査を提案するも「インフルエンザなら会社を休むことができる。でも、コロナなら隔離になってしまうから困る」とおっしゃっていたので、Covid-19であることがわかった時は、Covid-19の重症化リスクのあるAさんのことを考えるとよかったと思う反面、「Covid-19で隔離になるのは仕事上、とても困る」というお気持ちも大変よくわかるため、私の心中は心底複雑でした。オミクロン株による感染者数がちょうど増え始めた時だったこともあり、自宅療養の選択肢はなく、即日入院となってしまったAさんですが、幸い、重症化せず、数日で解熱し、元気を持て余すほどだったと言います。

 Aさんは、PCR検査において「デルタ陰性」であったことから、全国的に感染が広がっているオミクロン株であったと考えます。重症化なく、数日で解熱し倦怠感も無くなったAさんの事例から、アメリカ政府の首席医療顧問であるファウチ氏が「オミクロン株はこれまでの変異ウイルスよりさらに感染力が強いものの、複数の研究から、オミクロン株はほかの変異ウイルスに比べて重症化しにくいことが示されている」と述べている通りだなと実感しています。

 外来診療でも、年明けから日に日にPCR検査数や抗原検査数が増えていき、1月の3週目には、検査をすれば3割程度は陽性が出るという状況になりました。昨年の夏によく聞かれた、味覚や嗅覚異常の訴えはほとんどありません。喉の痛みや鼻水、咳や熱といった、風邪や扁桃炎のような症状の方が多いものの、呼吸苦やひどい咳をしている人は少なく、検査をする時点で、重症だなと思う方はほとんどいません。風邪だと思い、病院を受診せず、検査もしていないというケースもたくさんあるのだろうなと想像します。

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元気なのに1カ月入院になる可能性も