都内の認可保育園から保護者に送られた、新型コロナウイルスによる臨時休園を知らせるメール
都内の認可保育園から保護者に送られた、新型コロナウイルスによる臨時休園を知らせるメール

 保育園だけではなく、医療機関でも感染が広がっている。政府分科会の尾身茂会長が理事長を務める地域医療機能推進機構の傘下にある横浜中央病院では、25日時点で34名の院内感染が判明した。担当者は「クラスターが起きた」という。

 こんな非常事態の中で、厚労省が24日に出した新たな外来診療の対応が大きな波紋を呼んでいる。

「同居家族などの感染者の濃厚接触者が有症状となった場合には、医師の判断で検査を行わなくても臨床症状をもって診断することも可能」

「病状が軽く重症化リスクが低い方について、自ら検査した結果を自治体が設置する健康フォローアップセンターなどに連絡していただくことで、迅速に健康観察などを提供する対応が可能であることをお示ししたい」

 24日、後藤茂之厚生労働相は記者団を前に、感染急拡大に伴う外来診療の新たな対応についてこう語った。「PCR検査などをしなくても、症状を見るだけで新型コロナの診断が可能」「医師の診断がなくても自宅療養に移ることが可能」といった内容だ。厚労省から各都道府県などに出された通知には、<自治体の判断でこうした判断が可能>と書かれている。

 これに対して現場の医師からは疑問の声が上がっている。新型コロナの診療を行うインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長は「国民は国民皆保険のもと『受診する権利』を持つが、それを放棄させる発言だ」と指摘する。

 国民健康保険は、医療を受ける権利を国が保障する制度の一つだ。国民には「受診する権利」や「健康になる権利」があるとされる。こうした考えのもと、必要な人に医師が診察、診断をするという体制がこれまで整えられてきた。倉持院長はこう語る。

「症状がなくても肺炎を起こしている人もいるわけで、本当に重症化リスクを持っているのか、本人だけで判断できるものではない。日本のこれまでの医療のあり方を覆すような考え方です。第6波までにこれまで出てきた課題を一つ一つ検証して対策を考えていれば、このような事態は避けられたはず。後藤大臣の発言からは『1人でも命を救う』という気概が感じられず、逃げを打ったようにも見える」

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「亡くなっても自己責任」と言われる懸念も