
「最近は、トイレにスマホを持ち込んでYouTubeなどの動画を見る人が増えています。ずっと前かがみになった状態で見ているので、長時間腹圧がかかってしまい、いぼ痔になる人が増えている印象がありますね」
一方、切れ痔は、特に女性に多いそうだ。原因は、ダイエットにある。
「便が硬くなることで、排泄時に肛門が裂けて起こることが多い。治癒するためには、便を軟らかくする必要がありますが、ダイエットを続けていると食事量の減少にともなって排便回数が減り、ずっと便が硬いままになってしまいます」
対照的に、痔瘻は、下痢が原因で起こりやすいという。
「痔瘻というのは、肛門の周囲に小さな穴が開いて、そこから膿が漏れ出てくる状態のことです。肛門の入り口から2センチほど奥に『肛門小窩(しょうか)』という米粒大の小さなくぼみがあるのですが、下痢が続くと、そのくぼみに頻繁に便が入ってしまう。さらに風邪などで抵抗力が弱まったのをきっかけに、中で細菌感染を引き起こし、膿がたまって穴が開いてしまいます」
林医院の場合、痔の患者の2~3割が高齢者で、「かなり重度化してから来院される方も少なくない」という。痛みがないと、自然に治るだろうと安易に考えがちだが、楽観視はできない。
◆大腸がんの出血 痔だと勘違い
「いぼ痔がひどくなると、水道の栓をひねったように大量に出血することもあります。それが原因で貧血になって、階段や駅のホームから転落してしまった人も実際にいる。切れ痔の場合、大量に出血することはありませんが、症状を繰り返すと肛門括約筋が硬くなり、肛門が狭くなってしまう。そうなると便を出すたびに出血するようになり、手術が必要になることもあります。また、痔瘻が10年以上続くと、肛門がんになるリスクも出てくるため注意が必要です」
危険なのは、痔の悪化だけではない。大腸がんによる出血を、痔だと勘違いして放置してしまうケースもある。